原田博司 情報学研究科教授、小宮邦裕 ローム株式会社課長らの研究グループは、数kmに存在する数百のセンサーからの情報をIPv6によるマルチホップを利用して、低消費電力で伝送可能なIoT(Internet of Things:「モノ」のインターネット) 向け新国際無線通信規格Wi-SUN FAN (Field Area Network)に対応した無線機の基礎開発に成功しました。
本研究成果は、2016年11月16日より開催される組込み総合技術展「Embedded Technology 2016」において展示される予定です。
研究者からのコメント
社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォームを構築するためには各種センサー、メーター、モニターから創出されたビッグデータを効率的に処理エンジンに伝送する必要性があります。一方で社会実装を行うために容易にプログラミング可能であり、かつ小型、低消費電力、低コストである国際標準化された無線機を実現する必要性があります。今回開発したWi-SUN FANはこのすべてを満たす国際無線通信規格です。今回この規格に対応した無線機の開発に成功したことにより、全世界でWi-SUN FANシステムが今の無線LANシステムのように広がることが期待されます。
本研究成果のポイント
- 半径数km内に存在する数百のセンサーからの情報をIPv6による無線多段中継(マルチホップ)を利用して、低消費電力で収集
- 製造ベンダー間で相互接続性がある新国際無線通信規格Wi-SUN FANを初めて無線機の形で実現
- 国際規格対応によりアプリケーション開発が非常に容易になり、マルチホップを利用したIoT開発を促進
概要
これまでのマルチホップ可能な無線センサーネットワークの技術は、製造ベンダー間で相互接続可能な技術仕様化はされていない独自仕様であったため、自由に機器開発、アプリケーション開発できず、IoT実現のための障壁になっていました。
そこで本研究グループは、屋外で利用可能なセンサー、メーター等に搭載し、エネルギーマネージメント等を行うために必要となる無線通信伝送部(物理層)の国際標準規格であるIEEE802.15.4g技術を核に、IPv6方式およびIPv6でマルチホップな方式を融合し、製造ベンダー間で相互接続性があるWi-SUN FAN仕様を初めて無線機の形で実現しました。
本研究成果により、アプリケーション開発が非常に容易になり、マルチホップを利用したIoTがより促進されると期待されます。
図:開発した無線機を用いたマルチホップ実験
アクセスポイントから2台の端末に接続し、その2台からマルチホップで伝送
詳しい研究内容について
- 新国際無線通信規格Wi-SUN FANに対応した無線機の基礎開発に成功 -手軽にIoTが実現できるマルチホップ対応 無線通信ソリューションを提供-
- 京都新聞(11月15日 31面)、日刊工業新聞(11月24日 16面、1月6日 15面)、電波新聞ハイテクノロジー(12月1日)および日経産業新聞(12月21日)に掲載されました。