松沢哲郎 霊長類研究所教授を研究代表者とした京都大学、中部大学、オックスフォードブルックス大学、ケンブリッジ大学など国際共同研究チームは、野生チンパンジーがアルコールを含んだものを嫌悪することなく採食することを発見しました。
本研究成果は、英国王立協会のオープンアクセス誌「Royal Society Open Science」英国時間の6月10日付けにて掲載されました。
研究者からのコメント
本研究は、長い間のフィールドワークで初めて明らかになった成果です。ギニア共和国ボッソウでは野生チンパンジーの研究が1976年以来、ほぼ40年近く続いています。京都大学霊長類研究所を中心にした国際チームです。長いあいだ観察を続けているので、野生チンパンジーがわれわれ研究者を警戒することなく、自然な姿を見せてくれるようになりました。チンパンジーのさまざまな姿を、ぜひ関連リンク先でご覧ください。
概要
ヒトとアフリカにすむ大型類人猿はアルコール代謝を可能にする遺伝的変異形質を共有しています。ところが、飼育下における実験的投与や野生類人猿における逸話的な観察事例をのぞくと、習慣的かつ自発的なアルコールの消費はこれまでヒトでのみ知られていました。
ギニア共和国ボッソウでは野生チンパンジーの研究が1976年以来、長期に継続しておこなわれています。ボッソウの地域住民はラフィアヤシの木の上にポリタンクを設置し、朝と夕方に自然発酵したパームワインを回収します。アルコール度数は平均すると3.1%でしたが、6.9%に至るものもありました。ボッソウにくらす野生チンパンジーは、このポリタンクを発見すると道具となる葉っぱを浸し、パームワインを飲みます。1995年から2012年まで計20回、のべ51個体が観察されました。この行動は性別を問わず、6歳の子供から大人までにみられました。本研究は、野生チンパンジーがアルコールを含んだものを嫌悪することなく採食することを示しています。
パームワインをのむ野生チンパンジー
詳しい研究内容について
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1098/rsos.150150
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/198444
Kimberley J. Hockings, Nicola Bryson-Morrison, Susana Carvalho, Michiko Fujisawa, Tatyana Humle, William C. McGrew, Miho Nakamura, Gaku Ohashi, Yumi Yamanashi, Gen Yamakoshi, Tetsuro Matsuzawa
"Tools to tipple: ethanol ingestion by wild chimpanzees using leaf-sponges"
Royal Society Open Science 2: 150150 Published 9 June 2015
- 朝日新聞(6月17日 33面)、京都新聞(6月13日 28面)、産経新聞(6月13日 3面)、中日新聞(6月13日 3面)および毎日新聞(6月11日夕刊 1面)に掲載されました。
関連リンク
- 京都大学霊長類研究所チンパンジー・アイ
http://langint.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/index-j.html