新宅博文 工学研究科助教、Juan G. Santiago スタンフォード大学教授らの研究グループは、マイクロ流体技術を用いた網羅的・高速・高感度のDNA分析技術の開発に成功しました。
本研究成果は、独国科学誌「Angewandte Chemie International Edition」に2014年10月10日付けでオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
今回の研究成果により、本技術を基盤とした高速かつ網羅的な分子分析技術が確立できます。短時間で高感度の分析が可能であることから、例えば体液中のmiRNAの検出など、極低濃度でしか存在しないバイオマーカの検出等に適していると考えられます。
現在のシステムはマイクロ流路を用いた反応の後、特別なフローサイトメータを用いて反応量の検出を行っています。フローサイトメータを用いた検出では、ある一定数以上のマイクロビーズが必要である一方で、検出感度はより少量である方が高くなります。以上から、今後は、少量のマイクロビーズを用いた反応・検出システムを確立し、さらなる高感度化を達成したいと考えます。
概要
これまで、DNAのハイブリダイゼーションを利用した分析技術は、極微量しか存在しないターゲットを検出するために長時間の反応時間を必要としていました。
今回開発に成功した本技術は、マイクロ流路(1mm以下の代表寸法を有する微小な流路)における等速電気泳動と呼ばれる現象を用いて、ターゲットDNA分子とその捕捉分子で修飾したマイクロビーズを共濃縮し、反応速度を大幅に向上するものです。この反応速度の向上により、約20分の反応で20時間の反応と同等の検出感度を達成することが可能となりました。
また本技術は、30分の反応時間を用いた結果と比較すると約5倍の計測感度を得ることが可能です。さらに、同一サンプル内に存在する複数のターゲットを同時に定量することが可能であり、今後、本技術を基にした高速かつ網羅的核酸解析が可能になると期待されます。
図:(a)開発した高速DNA反応法の概念図。速いイオンと遅いイオンの中間の電気泳動速度を有するターゲット分子とビーズが等速電気泳動法により共濃縮されることにより、ビーズ表面の捕捉分子とターゲット分子の反応が高速化される。(b)試作したマイクロ流路。深さ約130μm。(c、d)ターゲット分子とビーズの共濃縮状態の可視化写真。(図b中に示したcおよびdの位置に対応。ピンク:ビーズ、緑:ターゲット分子)(e)濃縮層内部におけるビーズの流動。この内部流動によりさらに反応が促進される。
詳しい研究内容について
マイクロ流体技術を用いた網羅的・高速DNA分析技術の開発に成功 -網羅的・短時間・高感度のバイオマーカ検出技術の確立に期待-
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1002/anie.201408403
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/199656
Hirofumi Shintaku, James W. Palko, Glenn M. Sanders, and Juan G. Santiago
"Increasing Hybridization Rate and Sensitivity of Bead-Based Assays Using Isotachophoresis"
Angewandte Chemie International Edition 53, Published online: 10 OCT 2014