2014年4月22日
諏訪雄大 基礎物理学研究所特定准教授、滝脇知也 国立天文台特任助教、固武慶 福岡大学准教授らの研究チームは、スーパーコンピュータ「京」を用いて超新星爆発の大規模数値シミュレーションを行い、超新星爆発がニュートリノ加熱によって起こる可能性を示しました。
本研究成果は、国際論文誌「The Astrophysical Journal」に掲載されました。
研究者からのコメント
超新星は、宇宙で最大の爆発現象の一つです。その明るさは星の集合体である銀河に匹敵するほどのもので、古来から数多くの観測事例が報告されていますが、いまだにどうやって爆発しているのかよく分かっていません。また超新星は地上では不可能な極限的状況が実現されており、未知の物理を探る実験場としての側面も持ちます。今回、私たちは既存の物理を総動員した非常に精密なシミュレーションを行いました。その結果、爆発に近い状況を得ることに成功しました。しかし、いまだ爆発のエネルギーが実際の宇宙空間で起こっているものに比べてずっと小さいなどの問題があります。これは、私たちのシミュレーションで用いている近似のせいなのでしょうか? それとも未知の物理がそこに隠れている証拠なのでしょうか? この疑問に答えるため、今後さらに精密なシミュレーション研究を進めて行く予定です。
概要
超新星がどのようなメカニズムで爆発するのかは、複雑な高エネルギー現象が絡みあうため、天文学者が50年も頭を悩ませている難問です。ニュートリノ加熱説は有力ではありましたが、これまでは星の形状を完全な球と仮定するなど、現実の超新星爆発とは異なる設定のシミュレーションしか行えなかったため、それが正しいかどうかの議論を進める事ができませんでした。
今回、スーパーコンピュータ「京」を用いることで、かつてないほどの大規模なシミュレーションが可能になりました。そのため、より現実に近い設定で超新星爆発の計算を行うことができるようになったのです。その結果、自然な仮定の下に超新星が爆発する初めての例を得ることができました。これはニュートリノ加熱説を支持する強力な証拠と言えます。
図:超新星爆発のもととなる衝撃波の時間発展
衝撃波ができた時を0秒として、(a)50ミリ秒後、(b)110ミリ秒後、(c)130ミリ秒後、(d)170ミリ秒後のエントロピーを可視化している。熱く密度が低い部分ほど赤く表示上段が3次元でみた衝撃波の表面、下段が3方向に切った時の断面図を表す。白い枠線の大きさは600kmを示している。「ms」はミリ秒であり、1ミリ秒=1000分の1秒である。
詳しい研究内容について
スーパーコンピュータ「京」による計算で超新星爆発のニュートリノ加熱説が有望に
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1088/0004-637X/786/2/83
Tomoya Takiwaki, Kei Kotake and Yudai Suwa
"A COMPARISON OF TWO- AND THREE-DIMENSIONAL NEUTRINO-HYDRODYNAMICS SIMULATIONS OF CORE-COLLAPSE SUPERNOVAE"
The Astrophysical Journal, Vol. 786(2): 83, 2014 May 10