2014年4月11日
宮地良樹 医学研究科教授、椛島健治 同准教授、中嶋千紗 同助教、大塚篤司 同非常勤講師(チューリッヒ大学病院皮膚科研究員)らの研究グループは、末梢血中に数%しか存在しない好塩基球と好酸球が相互作用することで、おむつかぶれなどの刺激性皮膚炎を引き起こしていることを明らかにしました。
本研究成果が、米国科学誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」誌に掲載されました。
研究者からのコメント
おむつかぶれなどの刺激性皮膚炎が、末梢血にわずかしか存在しない好酸球と好塩基球で引き起こされていることを明らかにしました。これまで刺激性皮膚炎の治療にはステロイド外用剤が主に使われてきましたが、今回の研究結果から、好塩基球と好酸球をターゲットとした新たな治療戦略の開発が期待されます。
概要
好酸球は、末梢血中2~5%を占める顆粒球です。以前より好酸球はアレルギー性疾患および寄生虫疾患に関与していることが知られていました。一方で好塩基球は、末梢血中約0.5%しか存在しない顆粒球です。以前私たちは好塩基球がアトピー性皮膚炎の主体となるTh2反応に重要な働きをしていることを明らかとしました。しかしながら、おむつかぶれなどの刺激性皮膚炎における好酸球と好塩基球の関係性や役割については依然不明でした。
本研究グループは、好酸球が欠如したΔdblGATAマウスや好酸球の過剰発現したインターロイキン5(IL-5)トランスジェニック(Tg)マウス、さらに好塩基球特異的除去マウス(BasTRECK Tgマウス)マウスに対し、クロトンオイルを用いた刺激性接触皮膚炎モデルを施行しました。 その結果、ΔdblGATAマウスでは、その反応は著明に減弱し、IL-5 Tgマウスでは著明に増強していました。このことより刺激性皮膚炎の形成に好酸球が重要な役割を果たしていることが示唆されました。
さらに、刺激性接触皮膚炎マウスモデルの病変部に好酸球と好塩基球が共存しており、好塩基球浸潤が好酸球浸潤に先行することが分かりました。中和抗体やBas TRECK Tgマウスを用いて好塩基球を除去すると、皮膚への好酸球浸潤は減弱していることから、好塩基球が好酸球の皮膚浸潤を促進していることが示唆されました。続いて、好塩基球による好酸球の走化性(引っ張る力)への影響を検討した結果、好塩基球側に好酸球の走化性が促進することが分かりました。また、刺激性皮膚炎の炎症局所において好酸球の主要な走化性因子の一つであるEotaxin/CCL11は産生されているにもかかわらず、好酸球と好塩基球のみではEotaxin/CCL11を産生していないことが分かりました。
そこで、真皮に豊富に存在する線維芽細胞がEotaxin/CCL11を産生することが既に報告されていることから、線維芽細胞と好塩基球の関係性に注目しました。維芽細胞と好塩基球を共培養したところ、RANTES/CCL5とEotaxin/CCL11の産生を見出しました。この反応は抗TNF-a中和抗体および抗IL-4中和抗体により阻害されることもわかりました。さらに、好塩基球と線維芽細胞を共培養した時の分泌物が、好酸球の走化性を亢進していました。以上より、好塩基球が皮膚への好酸球の浸潤と活性化に線維芽細胞と協調して関与していることが示唆されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1016/j.jaci.2014.02.026
Chisa Nakashima, Atsushi Otsuka, Akihiko Kitoh, Tetsuya Honda, Gyohei Egawa, Saeko Nakajima, Satoshi Nakamizo, Makoto Arita, Masato Kubo, Yoshiki Miyachi, and Kenji Kabashima
"Basophils regulate the recruitment of eosinophils in a murine model of irritant contact dermatitis"
The Journal of allergy and clinical immunology
published online 07 April 2014
掲載情報
- 朝日新聞(4月11日 30面)、京都新聞(4月11日 25面)、中日新聞(4月11日 29面)、日刊工業新聞(4月21日 17面)および日本経済新聞(4月11日 34面)に掲載されました。