農学研究科では、京都大学研究資源アーカイブ事業における「田中正武研究資料, 1929-1997」公開を記念し、展示「京都大学コムギ遺伝資源 -田中正武博士が残した植物探索の記録-」を、2024年6月20日〜22日、北部構内旧演習林事務室ラウンジにて実施し、約150名が観覧しました。
田中正武博士(本学名誉教授、1920年-2001年)は、生物学的手法、考古学的手法、文化史的手法を統合し、作物と進化を解明する「栽培植物起原学」の学問分野を開拓しました。1959年から1989年にかけて10回以上海外学術調査に携わり、ユーラシア各地、アフリカ、南米におけるフィールド・ワークにより、栽培植物の祖先種の自生地を探索し、種子などの植物資料を採集すると同時に、周辺環境情報、農法や利用法といった文化的情報を記録しました。「田中正武研究資料, 1929‒1997」には、田中博士が実施した現地調査の準備から実施後の研究に至る、幅広い一次資料が含まれています。一方で、現地調査で採集された植物資料のうち、コムギとその近縁野生種の種子は、系統化され、遺伝資源として京都大学大学院農学研究科で維持されており、現在のコムギ研究を支えています。
本展示は、寺内良平 農学研究科教授を委員長とした展示実行委員会により、企画・実施しました。昨年開催された展覧会「学術探検と遺伝資源」の内容に加え、研究資料の整理の過程で新たに見出された資料を用いて、現地調査における採集物がどのように分類、系統化され、NBRP・コムギの遺伝資源として整備されてきたのかを紹介しました。あわせて、NBRP・コムギの遺伝資源の重要性と、世界の食糧安全に向けた遺伝資源利用の取り組みと展望についても紹介しました。
会期中には寺内教授による展示解説ツアーを実施し、各回10〜20名が参加しました。観覧後のアンケートには、「『研究』というものを具体的に知ることができた」、「きちんと整理されたデータがぎっしりと大量に載っているのを見ると、どれほど根気強く調査をしているのかがよく分かった」、「実際の穂や種などが多くあって、イメージがわきやすかった」などの感想が寄せられました。