学生歌

作詞:長崎 太郎
作曲:芥川 徹
(昭和28年6月18日学生歌公募入選作)

1 光溢るる蒼空に
無限の時を刻みつつ
逝きて帰らぬ青春の
尊き命育みて
真理の途に励ましむ
吾等の誇学の塔
2 嗚呼ここにしも東西の
思想の潮渦巻きて
荒るる怒涛の地を打てど
八つの灯掲げつつ
学徒吾等の拠りて立つ
岩根は固し学の塔
3 楠の大木に風薫り
萌ゆる若葉に陽は映えて
今日廻り来ぬ記念の日
自由独立自治を求め
吉田山辺に学舎を
創めし大人を偲ぶかな
4 嵐雄叫ぶ唯中に
学の自由を譲りてし
不抜の信念君知るや
国敗るとも外国に
学の誉れを弥高く
挙げし功を思わずや
5 朝靄曳きて黙深き
巷を覚ます時の声
闇に暮れゆく都路に
比叡の大嶺を背にし
光を高く掲ぐなる
吾が学塔に栄あれ

逍遙の歌 紅もゆる

1 紅もゆる岡の花
早緑匂ふ岸の色
都の花に嘯けば
月こそかかれ吉田山
2 緑の夏の芝露に
残れる星を仰ぐ時
希望は高く溢れつつ
我等が胸に湧返る
3 千載秋の水清く
銀漢空にさゆる時
通へる夢は崑崙の
高嶺の此方ゴビの原
4 ラインの城やアルペンの
谷間の氷雨なだれ雪
夕べは辿る北溟の
日の影暗き冬の波
5 嗚呼故里よ野よ花よ
ここにももゆる六百の
光も胸も春の戸に
嘯き見ずや古都の月
6 それ京洛の岸に散る
三年の秋の初紅葉
それ京洛の山に咲く
三年の春の花嵐
7 左手の文にうなづきつ
夕べの風に吟ずれば
砕けて飛べる白雲の
空には高し如意が嶽
8 神楽ヶ岡の初時雨
老樹の梢傳ふ時
檠燈かかげ口誦む
先哲至理の教にも
9 嗚呼又遠き二千年
血潮の史や西の子の
榮枯の跡を思うにも
胸こそ躍れ若き身に
10 希望は照れり東海の
み富士の裾の山櫻
歴史を誇る二千載
神武の兒等が立てる今
11 見よ洛陽の花霞
櫻の下の男の子等が
今逍遙に月白く
静かに照れり吉田山

琵琶湖周航の歌

作詞:小口 太郎
作曲:吉田 千秋
(大正6年)

1 我は湖の子 さすらいの
旅にしあれば しみじみと
昇る狭霧や さざなみの
志賀の都よ いざさらば
2 松は緑に 砂白き
雄松が里の 乙女子は
赤い椿の 森陰に
はかない 恋に泣くとかや
3 波の間に間に ただよえば
赤い泊まり火 なつかしみ
ゆくえさだめぬ 浪枕
今日は今津か 長浜か
4 瑠璃の花園 珊瑚の宮
古い伝えの 竹生島
仏のみ手に 抱かれて
眠れ 乙女子 安らけく
5 矢の根は深く 埋もれて
夏草しげき 堀のあと
古城にひとり たたずめば
比良も伊吹も 夢のごと
6 西国十番 長命寺
汚れのうつしよ 遠く去りて
黄金の波に いざ漕がん
語れ我が友 熱き心