第4回京都大学優秀女性研究者賞(たちばな賞)表彰式 挨拶 (2012年3月2日)

第25代総長 松本 紘

 鈴木咲衣(すずき さきえ)さん、塩尻かおり(しおじり かおり)さん、本日は、京都大学優秀女性研究者賞「たちばな賞」の受賞、おめでとうございます。この栄誉は、お二人が研究に注がれた並々ならぬ精進の結果が認められた結果だと確信しています。今後も、ますます研究に邁進し、一つの地点に留まることなく、さらに大きく飛躍し、国内はもとより国際的にも、京都大学を代表する研究者の一人となっていただくことを切に期待しております。

 また、先ほど、今回の表彰から、この「たちばな賞」の趣旨にご賛同いただきました株式会社ワコール様より、副賞として「ワコール賞」を贈呈いただきました。ワコール代表取締役社長の安原弘展(やすはら ひろのぶ)様には、本日、ご多忙にもかかわらずご臨席賜り、誠にありがとうございました。高いところからはなはだ失礼とは存じますが、厚く御礼申し上げます。

 さて、この京都大学優秀女性研究者賞は、女性研究者の研究活動への支援と研究環境の充実・整備を目的として立ち上げた女性研究者支援センターが実施する支援事業の一つとして、京都大学の顕彰制度と位置付け、創設いたしました。「たちばな賞」は、女性研究者の広汎な研究活動の中で、分野を限定することなく研究業績を評価して顕彰する制度であり、他の大学には見られないたいへんユニークなものです。選考委員会の先生方にとっては、学内から推薦のあった、様々な研究領域における優れた研究の中から、学生部門と研究者部門について、1名ずつに絞って選ばなければならないということで、毎年、たいへんなご苦労があると伺っております。

 「たちばな賞」と称され、表彰楯などにデザインされている橘の花は、平安時代、御所の紫宸殿の前に植えられていた「右近の橘、左近の桜」と称されるなど、古来より珍重されており、今日では文化勲章の5弁の花のデザインにも用いられております。昭和天皇の「桜は散るところに価値があるが、文化は永遠であるべき」とのご意向を受け、常緑樹の悠久性、永遠性は文化の永久性に通じることから橘によるデザインになったとされています。これらに因んで、若手の女性研究者を顕彰する京都大学優秀女性研究者賞においても、受賞者の研究を讃えるとともに、優れた女性研究者が輩出され、その活躍が永続的なものとなるよう祈念し、「たちばな賞」の呼称をつけました。

 京都大学では、平成21年度より、次世代研究者育成支援事業「白眉プロジェクト」を設けて、学問の新たな潮流を拓くことのできる広い視野と柔軟な発想を持つ創造性豊かな人材を毎年度20名程度特定教員として採用し、自由な研究環境を与え、全学的に支援をしております。毎年度、国内外から500名前後の応募があり、倍率20倍を超える狭き門なのですが、過去「たちばな賞」を受賞してからこの難関を突破した者が2名いますし、今回受賞されました塩尻かおりさんは、22年度から白眉プロジェクトで採用された方です。白眉プロジェクトが、この「たちばな賞」と同様に、京都大学における優秀な女性研究者養成の一躍を担っていることを大変喜ばしく感じます。

 明日3月3日は雛祭りです。女の子のすこやかな成長を祈る節句の年中行事で、京都大学では、毎年この日を(今年は休日に当たるため、前日の2日になりましたが)「たちばな賞」の表彰式とし、この行事を続けていければと思っています。

 最後になりましたが、本日の、第4回「たちばな賞」表彰式にご出席くださいました皆様にも、京都大学の目指す方向性をご理解いただき、女性研究者育成支援事業にご協力・ご支援いただけますようお願いするとともに、この場におられる若手女性研究者の皆さんも、今回、受賞されたお二人の研究者の後に続き、京都大学のさらなる発展に貢献してくださるようお願いをして、総長としての挨拶に代えさせていただきます。

集合写真

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