第25代総長 松本 紘
木々の緑もようやく深くなる季節を迎えました。
本日、宇治地区先端イノベーション拠点施設竣工記念式典の開催にあたり、多くの皆様方にご参加いただきましたことを、京都大学を代表して厚く御礼申し上げます。
また、東日本大震災への対応などで大変お忙しい中ご出席くださいました、永塚誠一 近畿経済産業局長、久保田勇 宇治市長をはじめとするご来賓の皆様、学内外のご関係の皆様のご臨席を賜り、心より御礼申し上げます。
さて、先ほどテープカットを行いました「京都大学宇治地区先端イノベーション拠点施設」は、経済産業省の平成20年度産業技術研究開発施設整備補助金の支援を受け「特定の技術分野において高いポテンシャルを有する地域において、世界最先端レベルの研究と関連する企業の製品開発とをつなぎ、世界最先端研究の産業利用を促進させる研究開発施設等を整備する事業を支援し、もって国際競争力を有する技術力を保持・発展させるとともに、地域経済の活性化を図る」ことを目的に建設されたものであります。
本施設は、先端かつ高度な研究拠点施設に相応しい端正な表情の外観、ガラスを効果的に使用した見通しの良い室内空間の演出などの「開かれた施設」、雨水の有効利用や全館LED照明の採用などの「省エネルギーへの配慮型施設」、テクニカルバルコニーやフリーアクセスフロアなどの採用により将来の多様な研究実験形態に対応が可能な「フレキシブル施設」、そして研究実験内容の漏洩を防ぐための「セキュリティの確保」や女性研究者の研究活動に配慮した「女性サポート室の整備」などをコンセプトに設計されました。
後ほど、本学の研究プロジェクトの紹介をさせていただきますが、この施設は産官学連携本部の小久見善八 特任教授をリーダーとするNEDO革新型蓄電池先端科学基礎研究や、宇治キャンパスのエネルギー理工学研究所の吉川暹 特任教授をリーダーとする次世代薄膜太陽電池の開発研究などが研究拠点として利用してまいります。
この蓄電池につきましては、ご存じのとおり、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話など、近年様々な分野に利用されておりますが、こうした状況をみると、高度成長期の「鋼鉄」、80年代から90年代にかけての「半導体」に次ぐ、現代の「産業のコメ」と言っても過言ではないかと思います。このように重要性が増す蓄電池ではありますが、一方、地球環境問題の対応や東日本大震災を契機としたエネルギー政策の見直しなど我が国をめぐる経済社会情勢は急激に変化しております。こうした課題に迅速に対応するには、蓄電池の飛躍的な性能向上によりスマートグリッドや電気自動車などを実用化し、低炭素社会を早期に実現することが不可欠であります。
今回、本学においてスタートする本施設がこうした目標を達成する上で重要な役割を果たすことを期待しており、あらためて政府関係機関、産業界の皆様のご協力をお願い申し上げる次第であります。
最後になりましたが、本施設建設への支援を賜りました経済産業省、竣工に至るまでのご協力を賜りました地域をはじめとする自治体の皆様や宇治キャンパス関係教職員の皆様、関係者各位のご助力に深く感謝申し上げます。
この施設が、京都大学の産官学連携推進の一層の飛躍を図る拠点となることを祈念して、私の挨拶とさせていただきます。