第1回京都大学優秀女性研究者賞(たちばな賞)表彰式 挨拶 (2009年3月3日)

第25代総長 松本紘

松本総長 本城咲季子さん、延與佳子さん、本日は第1回京都大学優秀女性研究者賞の受賞、おめでとうございます。この栄誉は、お二人が研究に注がれた並々ならぬ精進の結果が認められた結果だと確信しています。しかし、これはひとつのステップでしかありません。今後も、研究に邁進し、今に留まることなく、さらに大きく飛躍し、国内はもとより国際的にも京都大学の女性研究者の代表の一人となっていただくことを切に期待しておりますので、是非頑張っていただきたいと思います。

 さて、京都大学優秀女性研究者賞は「たちばな賞」とも称します。同賞は、今後の活躍が大きく期待される若手の女性研究者に授与されるものです。たちばな(橘)は、平安時代、御所の紫宸殿の前に植えられていた「右近の橘、左近の桜」と称されるなど、古来より珍重されており、今日では文化勲章の5弁の花のデザインにも用いられております。昭和天皇の「桜は散るところに価値があるが、文化は永遠であるべき」との意向を受け、常緑樹の悠久性、永遠性は文化の永久性に通じることから橘によるデザインになったとされています。これらに因んで、若手の女性研究者を顕彰する京都大学優秀女性研究者賞においても、受賞者の研究を讃えると共に、優れた女性研究者が輩出され、その活躍が途絶えることのないよう祈念し、「たちばな賞」の呼称をつけました。

 「たちばな賞」は、女性研究者の広汎な研究活動の中で、分野を限定することなく研究業績を評価して顕彰する制度であり、他の大学には見られないたいへんユニークなものです。そのために、あらゆる研究領域における優れた多くの研究の中から、学生部門と研究者部門において1名ずつを選ばなければならないという前途多難な役目を課せられた選考委員の先生方にあっては、多くのご苦労があったと聞いています。裏を返せば、それほどまでに京都大学の女性研究者は、様々な研究分野でそれぞれに高い能力を発揮されているということです。

 現在、「たちばな賞」をGoogle、Yahoo、Infoseekなどのネット検索サイトで調べますと、最初のページに現れる10件のうち、どこにおいても半数以上、場合によっては大半が京都大学優秀女性研究者賞である「たちばな賞」です。「たちばな賞」は、これ程までに世の中で広く知られるようになっていることが見て取れます。このことはまた、ひとえに京都大学の動きが、社会の中で大きく注目されていることを示唆しています。

当日の様子 この「たちばな賞」は、女性研究者支援センターで行っている女性研究者支援モデル育成事業のひとつとして発足し、京都大学の顕彰制度と位置付けて創設しました。女性研究者支援センターは、文部科学省の女性研究者育成事業に採択されたことをきっかけに、平成18年度に開設しました。再び、ネットで女性研究者や女性研究者支援センターで検索すると、トップまたはトップページに出てくるのが京都大学の女性研究者支援センターです。この事実は、本学の女性研究者支援センターがいかに活発に活動をしているかということと同時に、その活動に注目している人がたいへん多いということを示しているのです。即ち、この事業を通じて、世の中に、また全国の大学に女性研究者育成の重要性を広く発信していることになります。現在、この「女性研究者の包括的支援『京都大学モデル』」事業は3年目であり、本3月末に終了し、ひとつの区切りを迎えます。しかし、京都大学におきましては、本学が 重点的に取り組むべき事業である「京都大学重点事業アクションプラン2006~2009」の中で、女性研究者支援を継続することを決定しております。つまり今後も、女性研究者の育成に積極的に取り組んでいくと言うことです。

 本日の、第1回「たちばな賞」表彰式にご出席くださいました皆様にも、京都大学の目指す方向性を認識いただき、女性研究者育成支援事業に御協力・ご支援いただけますようお願いすると共に、この場におられる若手女性研究者の皆さんも、今回受賞されたお二人の研究者の後に続き、京都大学のさらなる発展に貢献してくださるようお願いをして、総長としての挨拶に代えさせていただきます。

関連リンク