グローバルCOE「地球温暖化時代のエネルギー科学拠点」キックオフシンポジウム 挨拶 (2009年1月28日)

第25代総長 松本 紘

冒頭挨拶

松本総長 京都大学第25代総長の松本でございます。本日はグローバルCOE「地球温暖化時代のエネルギー科学拠点」キックオフシンポジウムにご来場いただき誠にありがとうございます。

 また、本日のためにお越しいただいた文部科学省、日本科学技術振興財団、理化学研究所、東南アジア諸国連合科学技術委員会(ASEAN COST)を始め多くの関係者の方に厚く御礼申し上げます。

G-COE:京都大学として

 グローバルCOEプログラムは、我が国の大学院の教育研究機能を一層充実・強化し、世界最高水準の研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材育成を図るため、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援し、もって、国際競争力のある大学づくりを推進することを目的とする事業で、平成19年度からスタートした文部科学省のプログラムです。
  京都大学では、平成19年度に6つ、平成20年度に6つ、計12のグローバルCOEプログラム拠点が採択され、世界最高レベルの教育研究拠点が、高度な人材育成・研究拠点形成・新領域に取り組んでいます。

松本総長 「地球温暖化時代のエネルギー科学拠点」は学際、複合、新領域分野の拠点として平成20年6月に発足しました。本グローバルCOEプログラムの前身である21世紀COE「環境調和型エネルギーの研究教育拠点形成」では、私もその一員として、宇宙太陽光発電の研究を通じて環境調和型エネルギーシステムの研究教育に尽力してまいりました。この度、21世紀COEプログラムの成果を受け、環境調和型エネルギーからCO2ゼロエミッションを目標とする本グローバルCOEへと発展を遂げられたことは誠に喜ばしいことと思います。

 エネルギーの確保並びに環境の保全は、人類の持続的な発展のための最も重要な課題であることは言うまでもありません。資源、エネルギー、食糧などが地球上で有限のため、いずれ経済成長は止まるとローマクラブが警告したのが1972年であります。昨年初頭の原油価格の高騰から一転、世界経済が大きな嵐に見舞われ、米国のサブプライムローンに端を発した金融危機は多面的・複層的に絡んだ甚大な影響を世界に与えております。これはひとえにグローバル化した現代社会の中では、あらゆる問題に関してグルーバルな影響を考慮せざるを得ない状況にあることを示しております。さらにグローバルな課題でありますエネルギー問題におきましては、日本が全力を持ってしても、容易に解決できる課題とは思えません。まして、エネルギー問題は、単に技術だけの問題ということはできず、そこには社会や経済の要素も大きく関係し、まさにここに、理工学に社会科学と人文科学の視点を加えた学際・複合領域の確立が必要となってくると考えられます。
  ここにお集まりの皆様方には、十分ご理解頂いている事とは存じますが、本グローバルCOEでは、この困難な課題に対しまして、多くの方々のご協力、ご支援を賜りながら、その解決の道筋を世に示し、さらにこれを将来に渡り発展的に担うことのできる優秀な人材の育成を行うことが最も重要なミッションであると確信しております。

人材育成

松本総長 京都大学は創立以来、自由の学風のもと闊達な対話を重視し、京都の地において自主独立の精神を涵養し、高等教育と先端的学術研究を推進し、111年が過ぎました。激動の変革期といえる現在、京都大学には自由の学風を継承発展させつつ多元的な課題の解決に果敢に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献することが期待されております。

  教育基本法第7条に「大学は、学術の中心として、高い教養と専門知識を培うとともに、深く真理を探求し新たな知見を創造し、その成果を広く社会に提供することによって、社会の発展に寄与するものとする」と明記されております。この基本法の精神において、第一の使命である教育は「知の伝承」を通して広く人材を育成すること、第二の使命である研究は、最先端の研究活動を行い「知の創造」、「知的体系の構築」のため深く真理を探求することです。

  大学における創造的な研究活動には、その過程に学生たちを積極的に参加させ、次世代を担う優秀な人材を育成することが重要であります。

結語

 まさに地球温暖化時代に立ち向かう象徴的な京都というこの地において、その誇りと文化をしっかりと引き継いだ凛とした気概を持つ多くの優秀な人材を輩出し、世界最高レベルの教育研究拠点としてその存在を国内外に示すよう、本日キックオフをした「地球温暖化時代のエネルギー科学拠点」を益々発展させることをお約束して、挨拶とさせていただきます。