第25代総長 松本 紘
本日ここに京都大学再生医科学研究所の設立10周年記念式典が挙行されるにあたり、一言お祝いの言葉を申し上げます。
再生医科学研究所の前身である、胸部疾患研究所は、昭和16年3月に結核の予防及び治療を主軸とする結核研究所として設置され、昭和42年6月には結核胸部疾患研究所に名称変更、さらに昭和63年4月には胸部疾患に関する学理及びその応用の研究を目的とした胸部疾患研究所へ改組されました。胸部疾患に関する研究・治療を取り巻く社会的要請の変化から、胸部疾患研究所は57年間にわたる使命を終え、平成10年4月に同研究所の基礎系分野及び臨床系分野の一部と、人工臓器の研究・開発に関して顕著な業績を上げてきた生体医療工学研究センターとが統合し、生体組織及び臓器の再生に関する学理及びその応用の研究を目的とする、再生医科学研究所に改組・転換され現在に至っています。
本邦における初めて再生医学を冠した研究所として設立された訳ですが、幹細胞生物学の分野では、我が国初のヒト胚性幹細胞(ES細胞)の樹立研究を承認された施設として、平成15年11月までに3株の樹立に成功し、ヒトES細胞の樹立及び分配にあたり、我が国におけるES細胞研究の推進に大きく貢献されてきました。さらに、マウス続いてヒト誘導多能性幹細胞(iPS細胞)の作製という革新的成果を世界に発信し、我が国における再生医学研究の高さを示すことに大きく貢献されていることは、皆様よくご存じのとおりであります。
教育の面で再生医科学研究所は、医学研究科、工学研究科、理学研究科の協力講座となっており、100名以上の大学院生を受け入れ、次代を担う世界トップレベルの若手研究者を育ててきました。今後とも、多様な学問分野から育った研究者が共に研究を進め交流することによって新たな展開を目指す研究として、研究教育に大きな貢献をされることを期待しております。
また、本年10月1日付けで共同利用・共同研究拠点「再生医学・再生医療の先端融合的共同研究拠点」として文部科学大臣の認定を他の研究所に先駆け受けました。これも再生医科学研究所が再生医学・再生医療の実施機関として全国の研究者からの期待の現われだと考えています。
本日の式典を心から祝福いたしますとともに、再生医科学研究所が今後一層世界の再生医療・再生医学の進歩に貢献されることを念願してやみません。
以上をもってお祝いの言葉といたします。