京都大学上海センター 中国自動車シンポジウム 挨拶(2008年11月1日)

第25代総長 松本 紘

松本総長  京都大学総長の松本でございます。大学を代表いたしまして、一言ご挨拶申し上げます。

  上海センターが開催しました中国自動車シンポジウムに、たくさんの方々にご参加頂き、ありがとうございます。

  京都大学は、中国研究において世界的に認められる研究の蓄積を持っています。しかし中国研究の分野は主として近代以前の時代の歴史研究を対象として発展してきました。そのような中で、経済学研究科を中心とするご努力によって上海センターが6年前に発足し、現代中国の経済や社会に関する研究が急速に発展し、新しい情報を発信し続けています。これは京都大学の多くの成功している国際研究プロジェクトの一つとして位置づけることができます。
  とくに、上海センターが開催する中国自動車シンポジウムは、これまで、中国の自動車産業に関して、日本国内においては最も良質かつ最新の分析を提供してきたと伺っております。


会場の様子  そのため、今日のシンポジウムにご参加の方々は、大学関係者が半数以下で、多くは、自動車メーカー、自動車部品メーカー、自動車販売会社、コンサルティング会社、情報調査会社等、産業界からご参加くださっています。さらに、韓国や中国の自動車メーカーからも参加されているそうです。このようなことは、社会科学あるいは人文科学の学会では異例のことだそうで、上海センターの方に伺うと、その発信する情報の質が認められていて、その社会的実用的価値の高いことの証拠なのですと、自信を持ってたいへん心強いご説明をいただきました。この中国自動車シンポジウムはNHKの全国向けニュースでも報道されたことがあるのですが、京都大学としても自信をもって対外的に誇りうるシンポジウムです。

シンポジウムの様子  ところで今回のシンポジウムの内容をうかがいますと、中国自動車産業が今後、「持続的成長は可能か - サステイナビリティと製品開発力、輸出競争力 - 」というのがメインテーマです。このテーマは現在の中国自動車産業にとって最も重要な課題と思われます。というのは、既に、中国自動車産業は、国内販売台数では米国に次いで世界第二位、国内生産台数でも日本、米国に次ぐ第三位で、数年の内に、販売、生産ともに世界第一位になる可能性があるといわれております。とはいえ、東京オリンピックの後に日本でも不況になったのと同様、中国でも北京オリンピックの後、その反動で販売の落ち込みが見られるそうです。
  そうした中で、今年の中国自動車シンポジウムは、単に生産や販売の現状にとどまらず、自動車をとりまく環境問題や交通事故、交通渋滞、廃車リサイクル問題等も含めて、実に広範囲なテーマを取り上げて、議論がなされると聞いております。

 上海センターの活動がますます広がるにつれて、大学本部としましても総長裁量経費など全面的な支援を惜しんでおりませんが、ご来場の皆様方にも上海センター協力会に既に70社以上の企業・団体と200人以上の個人の方々にご入会頂き、サポートを受けていると伺っております。これからも上海センター協力会へのご指導とご支援を心からお願い申し上げます。

  最後に、多くの方々にご協力いただき、今日の中国自動車シンポジウムにたくさんの方々のご参加を賜りましたことに、あらためてお礼を申し上げて、私の挨拶といたします。
  ありがとうございました。