尾池 和夫
本日は、新造となりました海洋観測研究実習船「ヤンチナ」のおひろめに、参加できたこと大変嬉しく思います。またお集まりいただきました皆様、ありがとうございます。
京都大学の教育にとって3隻の大切な船があります。ひとつは、生態学研究センターが所有する琵琶湖に係留されている「はす」です。残りの2隻はフィールド科学教育研究センターが管理しておりますが、1隻は日本海側の舞鶴水産実験所に配備されている「緑洋丸」であります。そして、3隻目が太平洋側のここ白浜にいる「ヤンチナ」です。これらの船は、京都大学の学生のみならず、多数の大学さらには高校・社会人などのフィールド実習のために大活躍をしております。またこれらは海域・陸水域のフィールド研究にも、白浜にあります防災研究所支所の「海象」ともどもおおいに活用されていると聞いております。
わたくしは理学研究科長をしていた11年前に、瀬戸臨海実験所にお邪魔した時、先代の「ヤンチナ」に乗船しました。その時の印象は、渡し船に毛が生えたような単純な船でしたが、それに比べ、いま目の前にある新船ははるかに進化していて、たいへん感動しました。この船によって、瀬戸臨海実験所が実施する実習では、学生たちが最新の海洋観測を体験し、その教育効果は従来にくらべてはるかに充実したものになるに違いありません。
皆様よくご存じのとおり、我が国は、世界でも有数の面積の排他的経済水域を有する海洋国家であります。したがって充実した海洋学の教育を行うことは京都大学にとってひとつの重要な使命であると思います。ヤンチナの就航を契機に、瀬戸臨海実験所で研究を行う大学院生が、高度な知識と経験をもって学位を取得し、我が国の社会をリードする研究者などとなって巣立っていくことも楽しみです。
また言うまでもなく、瀬戸臨海実験所の教員が、ヤンチナを活用して、世界的な研究業績を次々と発表していくことも、期待しております。
フィールド研究は京都大学の誇るべき伝統の一つです。今後ヤンチナがその伝統を守り発展させる根幹となることを祈ってお祝いの言葉とさせていただきます。