京都大学未来フォーラム(第1回)「気候変動/地球温暖化を防ぐ-未来を築く市民に-」 挨拶 (2004年4月19日)

尾池 和夫

 このフォーラムは、京都大学が、社会との連携と協力を深めていく意図を持って講演会を企画し、広く市民のみなさまをお招きして、京都大学の教職員、学生とともに、意見交換のできる場を提供していこうというものです。

 大きな会場を用意しましたので、桜が満開になったら、人が来ないのではないかとか、雨が降ると吉と出るか、凶と出るか、そんな心配をしておりました。決して超満員とは言いませんが、そこそこの入りです。ほっとしました。でもまだ余裕があります。音を出さなければ、携帯電話のメールを使っていただいて結構ですから、お友だちを今からでも呼んでください。

 さて、今日は、第1回です。京都大学法学部を卒業されて、気候フォーラム-気候変動/地球温暖化を防ぐ市民会議-事務局長や、京都市、京都府、中央環境審議会などの委員で、気候ネットワーク代表という、浅岡 美恵さんをお迎えすることができました。京都大学の基本理念でもある、地球と人との共存を考えたいと思います。

 ここまでが、総長としての挨拶です。これからが、地球物理学者としての挨拶です。

 地球が生まれてから、46億年です。36億年前に生命が誕生しました。5億年前くらいに、日本列島の基盤岩類が形成されました。2億5千万年から1億5千万年前にこの京都府の基盤となる丹波層群が生まれ、その後、花崗岩類ができました。
 大文字山と比叡山の間にマグマが貫入してきて、両側を焼きました。そこが堅くなって浸食されにくい山になりました。マグマは花崗岩となって、どんどん削られ、白砂になってこの時計台の下に流れてきました。

 40万年前、マチカネワニがいました。15万年前、ナウマンゾウがいました。3万年前には、海進の時期があって、海がやってきました。2万年前には最終氷期の海退があって、海面は100メートル以上下がりました。大阪湾の海底には人が住んでいたと思われます。鳴門海峡の工事では、海面下40メートルの地層から石器が出ました。

 二条城の北側のボーリングコアから出てきた、牡蠣の殻が、総合博物館の入ってすぐの所にあります。京都盆地もかつて海でした。今から200万年前頃から、ほぼ10万年周期で、氷河期と間氷期がくり返しています。
 最終の氷河期が1万8千年ほど前に終わって、現在は、温暖化しています。プレート運動で、今の地球では北半球に陸が多くなってしまったので、このような気候の変化が起こるようになりました。海面は200メートルくらい上下します。
 そこで、時間の物差しが重要です。この変化に10万年かかっているのです。100年で20センチです。人間の登場で、大自然の動きにどれだけ影響を与えているかを考える必要があります。

 私からは、このようなテーマをみなさんに投げかけておいて、今日のフォーラムを始めたいと思います。ゆっくりとした時間を過ごしていただいて、じっと話を聞いていただいて、そして人はこの200年で何をしてきたか、これからの100年で何をするか、そんなことを考えていただきたいと思います。

 ご参加ありがとうございました。