森教授の受賞理由とコメントなど
このたびの受賞は小胞体ストレス応答の発見とその主要シグナル伝達経路の解明に関する業績が評価されたものです。森教授は、小胞体と呼ばれる細胞内小器官(膜で囲まれた細胞内構造物)に立体構造が異常になったタンパク質が蓄積していることを感知するセンサー分子IRE1を、酵母を用いて世界で初めて発見し,小胞体ストレス応答という新たな研究領域を開拓しました。その後、哺乳動物小胞体ストレス応答の分子機構を解析し、高等動物では、小胞体内に立体構造の異常なタンパク質が蓄積することに対して、より巧妙で多重な備えが用意されていることを明らかにしました。小胞体ストレス応答が様々な疾患の発症・進展に関与することが明らかにされており、治療や予防への応用が期待されています。
森和俊教授のコメント
1950年代に始まった新しいタンパク質研究の大きな流れに沿って、私が25年前にテキサス大学の博士研究員として酵母を使って始めた地道な基礎研究に対して、米国医学会最高の賞が与えられたことをとても嬉しく、また誇りに思っています。これまでにご指導をいただいた恩師の方々、世界と戦うために一緒に苦労してくれた共同研究者の皆様に深く感謝します。
今後も、さらに小胞体ストレス応答の研究を高めるべく、より一層努力して参ります。基礎研究の重要性を再認識してご支援賜りましたら幸いです。
松本紘総長のコメント
「本学森和俊教授が世界で最も権威ある科学賞の一つである「アルバート・ラスカー賞」を受賞されたという報に接し、京都大学として大変名誉なことと思います。これは、小胞体ストレス応答という新たな研究領域を開拓し、その主要シグナル伝達経路の解明を果たすことによって、多大な貢献をされたことによるものです。本学としてもより一層の研究環境の整備を行うとともに、世界トップレベルの研究者の人材育成に努めてまいりたいと存じますので、一層のご支援ご協力を賜りますように切にお願い申し上げます。」
ラスカー財団について
1942年にアルバート・ラスカー、メアリー・ラスカー夫妻によって設立されました。メアリー・ラスカー氏は医学研究への公的支援の重要性を米国で訴えた最も有力な活動家であり、財団の活動を指揮しました。財団は基礎および臨床医学をリードする科学者や顕著なパブリック・サービスを行った個人にラスカー賞を授与しています。このような活動により、医学研究への支援を提唱し、病気や障害の予防や治療に貢献することを目的としています。
ラスカー賞について
世界で最も権威のある科学賞の一つで、1946年に授与が開始されました。医学研究賞の審査員長は、1985年にラスカー基礎医学研究賞とノーベル生理学・医学賞を受賞したジョゼフ・ゴールドスタイン教授(テキサス大学)です。過去のラスカー賞受賞者のうち86人がノーベル賞を受賞しています。なお、過去30年間では、47人がノーベル賞を受賞しました。2014年の受賞者および過去の受賞者に関する情報は、以下のホームページからアクセスできます。
日本人の過去のラスカー賞受賞者
花房秀三郎氏(1982年受賞)、利根川進氏(1987年受賞)、西塚泰美氏(1989年受賞)、増井禎夫氏(1998年受賞)、遠藤章氏(2008年受賞)、山中伸弥氏(2009年受賞)