「音」に対する細胞応答の解明―生命と可聴域音波の関係性を問い直す成果―

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 粂田昌宏 生命科学研究科助教、吉村成弘 同准教授らの研究グループは、可聴域の音波刺激に対する細胞応答を解明しました。

 音波は我々動物個体にとっては五感の一つとして重要な環境情報ですが、細胞に対する作用については、科学的追究が進んでいませんでした。そこで本研究グループは、培養細胞に直接音波刺激を伝達する実験系を構築し、様々な細胞種や音波パターンに対する応答を探索したところ、細胞接着部を起点としたシグナル伝達のはたらきで細胞接着が活性化するとともに約190の音波応答性遺伝子が応答することや、脂質代謝が活性化することを明らかにしました。また、特に顕著な音波応答性を示した脂肪細胞系に着目し、脂肪細胞の分化が音波刺激により効果的に抑制されることを示しました。これらの成果は、細胞が可聴域音波に応答することをそのメカニズムとともに証明したものであり、生命に対する可聴域音波の生理的意義を問い直すものであるとともに、音波を用いた細胞操作や組織制御という新たなバイオテクノロジーの可能性を拓くものです。

 本研究成果は、2025年4月16日に、国際学術誌「Communications Biology」にオンライン掲載されました。

 

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可聴域音波と細胞の根源的関係性を示すイメージ図
研究者のコメント
「我々の周りは常に多彩な音で溢れています。音のバリエーションは無限で、非接触でありながら多くの情報を一瞬で伝達することもできます。細胞が音を受容し応答することが明らかになった今、『細胞はなぜ音を受容するのか』『音は我々の身体の細胞の状態とどう関係しているか』『音で細胞や組織の活動を制御できるか』といった新たな疑問の解決と目標の実現に向け、楽しみながら研究を進めていきたいと考えています。」(粂田昌宏)
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s42003-025-07969-1

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/293416

【書誌情報】
Masahiro Kumeta, Makoto Otani, Masahiro Toyoda, Shige H. Yoshimura (2025). Acoustic modulation of mechanosensitive genes and adipocyte differentiation. Communications Biology, 8, 595.

メディア掲載情報

読売新聞(4月17日 23面)に掲載されました。

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