霊長類脳でのドーパミン蛍光計測に成功―ドーパミンの機能解明へ大きく前進―

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 高田昌彦 ヒト行動進化研究センター特任教授(研究当時)、網田英敏 同特定准教授、井上謙一 同助教、ヤン・ガオゲ 同博士課程学生らの研究グループは、蛍光センサーを用いた霊長類脳でのドーパミン計測に世界で初めて成功しました。中脳にあるドーパミン神経細胞は、大脳基底核の線条体にドーパミンを放出して線条体への入力を調節することで、適切な行動の獲得に貢献しています。しかし、従来の手法では、霊長類の脳内におけるドーパミン神経伝達を高精度で計測することが困難でした。そのため、線条体にどのようなドーパミン信号が入力しているかについては、十分に解明されていませんでした。本研究では、ドーパミンを高感度かつ迅速に検出できる技術を用いて、サルの線条体で放出されるドーパミンを計測しました。その結果、サルが報酬を予測している際に、価値判断に関わるドーパミン信号が線条体に入力していることを明らかにしました。本研究の成果は、ドーパミンが関与する神経変性疾患の病態解明に向けた新たな手法となることが期待されます。

 本研究成果は、2025年3月13日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されました。

 

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本研究の概要
研究者のコメント
「本論文の共著者でもあるWolfram Schultz博士によるドーパミンの報酬予測誤差信号の発見以降、ドーパミンの機能について多くのことがわかってきましたが、霊長類の脳において報酬予測誤差信号がどこに送られているかはよくわかっていませんでした。今回、大学院生のヤンさんと一緒に、報酬に対して線条体のドーパミン信号が上昇するのを初めて目にしたときは、私たちの脳内でも同じようにドーパミンが放出されていたことでしょう。」(網田英敏)
研究者情報
研究者名
高田 昌彦
書誌情報
【書誌情報】
Gaoge Yan, Hidetoshi Amita, Satoshi Nonomura, Ken-ichi Inoue, Wolfram Schultz, Masahiko Takada (2025). Fluorescence detection of dopamine signaling to the primate striatum in relation to stimulus–reward associations. Proceedings of the National Academy of Sciences, 122, 11, e2426861122.