インシリコスクリーニングから見出した抗精神病薬が黄色ブドウ球菌の病原因子を阻害するメカニズムを解明

ターゲット
公開日

 奥野友紀子 医学研究科特定准教授、北所健悟 京都工芸繊維大学准教授、神谷重樹 大阪公立大学教授、広川貴次 筑波大学教授、伊中浩治 株式会社丸和栄養食品代表取締役社長、古林直樹 同研究員、加茂昌之 同研究員、引間孝明 理化学研究所研究員(研究当時)、山本雅貴 同部門長、前仲勝実 北海道大学教授らの共同研究グループは、黄色ブドウ球菌が産生する病原因子の1つである「リパーゼ(SAL)」と抗精神病薬のペンフルリドール(PEN)との複合体の立体構造をX線構造解析の方法を用いて、世界で初めて解明しました。

 インシリコスクリーニングを用いた手法で、約5万種類の既存薬の中から、PENが既存のSAL阻害剤と同等のレベルでSALの活性を阻害することを発見しました。さらに、宇宙空間での共結晶化に成功した結晶を、大型放射光施設「SPring-8」の強力なビームを使って測定することによって、SALとPENとの複合体の構造を原子レベルで解析し、PENによる阻害のメカニズムを解明することに成功しました。

 本研究成果は、構造情報を元にしたSALに対する薬剤の理論的な開発に役立つと考えられ、より有効性が高く副作用の少ない治療薬の探索・設計が可能になると期待されます。特に、SALが黄色ブドウ球菌の増殖に関与していることから既存の抗菌薬の効かないMRSA感染症や、黄色ブドウ球菌によって引き起こされるアトピー性皮膚炎などの治療薬の発展が期待されます。

 本研究成果は、2025年4月14日に、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

文章を入れてください
研究者のコメント

「本研究は京都大学医学研究科・医学研究支援センターの研究支援の一環として行われました。医学研究支援センターでは学内外、産学の区別なく、希望される多くの研究者の研究をサポートしています。興味のある方は、医学研究科・医学研究支援センター公式ホームページをご確認ください。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-025-94981-4

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/293308

【書誌情報】
Julia Kitadokoro, Takatsugu Hirokawa, Masayuki Kamo, Naoki Furubayashi, Yukiko Okuno, Takaaki Hikima, Masaki Yamamoto, Koji Inaka, Katsumi Maenaka, Shigeki Kamitani, Kengo Kitadokoro (2025). Structural analysis shows the mode of inhibition for Staphylococcus aureus lipase by antipsychotic penfluridol. Scientific Reports, 15, 11876.