ブロックチェーンのトリレンマは、2017年に提唱されて以来、開発者・研究者の間で広く信じられています。これは、性能(scalability)と安全性(security)、そして分権性(decentralization)の3つにはトレードオフがあり、同時には2つまでしか成立しないという経験則です。ただし、あくまで経験則であり、これまで数理的に表現されたことはありませんでした。
中井大志 情報学研究科博士課程学生、櫻井晶 同博士課程学生、廣中詩織 学術情報メディアセンター助教、首藤一幸 同教授らの研究グループは、ブロックチェーンのトリレンマを表現する数式を発見しました。具体的には、Proof of Work型のブロックチェーン(例:Bitcoin)において、安全性を下げるフォークという現象が起きる確率の逆数を安全性の指標とした場合に、その項と、性能を表す項、分権性を含む項、それら3項の積が一定である、つまり3項がトレードオフであるという数式を得ました。
本研究成果は、2024年6月5日に、国際学術誌「IEEE Access」にオンライン掲載されました。
ものすごいスピードで様々なトライが行われる一方、成果を人類の知識として積み重ねていく営み、つまり研究の方が追いついていない感があります。我々も、新しいトライに直結する工学的な研究とともに、今回の成果のような、裏側にある構造を解明する理学的な研究も一層進めていきます。」
【DOI】
https://doi.org/10.1109/ACCESS.2024.3410025
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/289516
【書誌情報】
Taishi Nakai, Akira Sakurai, Shiori Hironaka, Kazuyuki Shudo (2024). A Formulation of the Trilemma in Proof of Work Blockchain. IEEE Access, 12, 80559-80578.