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連続講演会「東京で学ぶ 京大の知」のシリーズ24は、「時を知る」をテーマに東京オフィスで開催しました。
シリーズ24の第3回は、「ヒトの一生を科学する」と題し、石川冬木 生命科学研究科教授が講演を行いました。
石川教授は、年齢別の死亡率の表を示しながら生殖年齢に達する10代以降から老化が進むことを述べ、老化の起こる仕組みは再生組織と非再生組織で異なることを説明しました。心臓、神経等の非再生組織は、生まれた時の細胞がほぼ一生使われ、活性酸素等による細胞の損傷が原因となって老化が始まるのに対して、皮膚、腸管、血管、肺等の再生組織は、死にゆく細胞と新しく作られる細胞のバランスによって老化が進行すると話しました。特に、再生組織で細胞分裂が有限なのは、DNAの末端部分のテロメアと呼ばれる部分が細胞分裂のたびに短くなって細胞分裂がスピードダウンするためで、テロメアは細胞分裂の数える老化時計のようなものであると解説しました。
また、老化と発がんの関係についても言及しました。つまり、細胞の増殖を止める老化は悲観的なイメージがあるが、実はがん化を抑制する防波堤のような役割を担っており、細胞の老化は、がん抑制と個体老化の二面性を持つことを解説しました。来場者からは、「老化が発がんを抑制しているとは驚きだった」という感想が寄せられる等、最新の研究成果に触れる機会となりました。