肺線維症における新規治療標的候補となるRNA分解酵素Regnase-1を同定 -2型自然リンパ球の機能制御を介した病態の解明-

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竹内理 医学研究科教授らの研究グループは、RNA分解酵素であるRegnase-1が、2型自然リンパ球(Group 2 innate lymphoid cells:ILC2)の機能を制御することにより、肺の線維化を抑制していることを見出しました。

肺線維症は慢性的な経過で肺の線維化が進行する病気であり、代表的な疾患である特発性肺線維症は発症後の生存期間中央値が3~4年とされています。現在、線維化の進行を防ぐために抗線維化薬などによる治療が行われていますが、その効果は限定的であり、新たな治療法が求められています。

本研究では、RNA分解酵素の一種であるRegnase-1に着目し、この分子が関連するヒトの病気について探索しました。その結果、Regnase-1は肺において、ILC2と呼ばれる免疫細胞の中でメッセンジャーRNAを分解し、ILC2の数や活性化を調節していることを見出しました。また、ILC2に発現するRegnase-1は肺線維症の増悪を防ぐ機能を持つことが明らかになりました。今後、ILC2におけるRegnase-1の発現量や機能を制御することで、肺線維症の新規治療法につながる可能性があると考えています。

本研究成果は、2020年9月25日に、国際学術誌「European Respiratory Journal」のオンライン版に掲載されました。

図:Regnase-1によるILC2の線維化促進機能の制御

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1183/13993003.00018-2020

Yoshinari Nakatsuka, Ai Yaku, Tomohiro Handa, Alexis Vandenbon, Yuki Hikichi, Yasutaka Motomura, Ayuko Sato, Masanori Yoshinaga, Kiminobu Tanizawa, Kizuku Watanabe, Toyohiro Hirai, Kazuo Chin, Yutaka Suzuki, Takuya Uehata, Takashi Mino, Tohru Tsujimura, Kazuyo Moro, Osamu Takeuchi (2020). Profibrotic function of pulmonary group 2 innate lymphoid cells is controlled by Regnase-1. European Respiratory Journal.