貧困は、子どもの健康や社会生活に悪影響を及ぼします。生活保護世帯の子どもたちは、健康や生活に関して多様なニーズを抱えており、個々の生活背景に応じた支援が求められています。また、効果的な支援方法も個々の生活背景によって異なります。
そこで、上野恵子 医学研究科特定助教らの研究グループは、生活保護世帯の子どもたちを生活背景に応じて類型化するために、1,275名が回答した質問紙調査から得た情報を用いて、機械学習の手法(ソフトクラスタリング)で生活背景の異なる小集団(セグメント)に類型化しました。次に、この分析で得られた結果をもとに、複雑な支援ニーズを持つ子どもたちを支援する専門家(NPO職員、児童精神科医、保健師、スクールカウンセラーなど。以下、「専門家」)へのインタビュー調査を実施し、各セグメントの生活背景や特性(人物像)を把握するとともに、それぞれに適した健康・生活支援策について意見を収集しました。その結果、特徴的なセグメントが抽出され、専門家が納得する5つのセグメント(「自分で何でもできる子ども」(セグメント1)、「施設にいる子ども」(セグメント2)、「引きこもりの子ども」(セグメント3)、「抽象的な質問に答えるのが面倒だと思う子ども」(セグメント4)、「生活保護利用の世代間連鎖がある世帯の子ども」(セグメント5))が得られました。さらに、専門家へのインタビュー調査の結果から、身体的健康にとどまらず、社会的健康(周囲の人々と関わり合いがあること、他者から必要とされることなど)・精神的健康を支える多様な支援策が示唆されました。具体的には、「高等教育進学への経済的支援」(セグメント1)、「多様で豊かな楽しみを経験するための支援」(セグメント2)、「継続的に交流できる家族以外の大人の存在」(セグメント3)、「自身のことを一緒に考えてあげる支援」(セグメント4)、「家族全体への支援」(セグメント5)です。本研究の成果をもとに、現在、各セグメントに適した支援プランの提示を行うテーラーメイド型支援システムの開発を進めています。
本研究成果は、2025年4月16日に、国際学術誌「International Journal for Equity in Health」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1186/s12939-025-02467-6
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/293443
【書誌情報】
Keiko Ueno, Daisuke Nishioka, Shiho Kino, Naoki Kondo (2025). A data-driven approach to detect support strategies for children living in households receiving public assistance in Japan: a mixed methods study to establish tailor-made health and welfare care. International Journal for Equity in Health, 24, 1, 103.