本州南岸を東進する「南岸低気圧」は、太平洋側の人口・産業集積地帯に大雨や大雪をもたらし、農業、交通、物流、再生可能エネルギーによる発電など、私たちの社会や経済に大きな影響を及ぼします。この南岸低気圧が春に多く発生することは知られていますが、その理由は解明されていませんでした。
吉田聡 防災研究所准教授、岡島悟 筑波大学准教授、中村尚 東京大学シニアリサーチフェロー(特任研究員)らの研究グループは、全球の大気データから移動性高低気圧を客観的に抽出する手法を開発し、北太平洋の高気圧・低気圧活動の季節性や近年の変化のメカニズムを明らかにしています。同グループは今回、この手法を数十年間にわたる大気の四次元データに適用しました。その結果、冬から春にかけて、日本の西にあるユーラシア大陸上で大気が暖められるのに伴って、東シナ海周辺で下層の西風ジェット気流が強まり、低気圧が発生しやすくなるために、南岸低気圧の活動が春にピークとなることが明らかになりました。
南岸低気圧の季節性を引き起こすメカニズムを知ることは、温暖化時の変化の理解を深め、日本域の季節予報の精度向上につながると期待されます。
本研究成果は、2025年4月16日に、国際学術誌「Journal of Climate」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1175/JCLI-D-24-0203.1
【書誌情報】
Satoru Okajima, Hisashi Nakamura, Akira Kuwano-Yoshida, Rhys Parfitt (2025). Mechanisms for an Early Spring Peak of Extratropical Cyclone Activity in East Asia. Journal of Climate, 38, 9, 1981-1997.