杉浦悠毅 医学研究科特定准教授は、佐藤惇志 ライオン株式会社マネージャーらとの共同研究で、健康な女性の血漿(血液の液体成分)を分析し、月経痛(生理痛)の重症度を客観的に示す「バイオマーカー」を特定しました。とくに、分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれるアミノ酸群と、特定のフォスファチジルイノシトール(PI)という脂質の量比が、痛みの強さと関わっていることを発見しました。また、注目すべきは、指先からのわずかな血液の採取でも、これらのバイオマーカーを測定することができることです。
これにより、他人とは比較できない月経痛が「どれくらい痛いのかを客観的に把握」することができれば、その辛さを周囲に伝えることで、職場や学校での配慮、家族の協力を得やすくなったり、医療機関への受診や専門家からの適切な支援を受けるきっかけになる可能性があります。また、月経期の前に測定し、「次の月経痛がどのくらい強いかを予測」することも可能であり、鎮痛剤を事前に準備できたり、予期せぬ強い月経痛に対する心の負担が軽減されます。月経痛による日常生活への影響を抑え、女性の健康管理を大きくサポートする新しい取り組みとして期待が高まります。
本研究成果は、2025年1月25日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-025-87415-8
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/292316
【書誌情報】
Atsushi Sato, Kanako Yuyama, Yuko Ichiba, Yasushi Kakizawa, Yuki Sugiura (2025). Branched-chain amino acids and specific phosphatidylinositols are plasma metabolite pairs associated with menstrual pain severity. Scientific Reports, 15, 3194.
朝日新聞(2025年3月8日夕刊 8面)に掲載されました。