カーボンナノチューブを融合して直径2倍のチューブへと効率よく変換―太いナノチューブの構造制御や後処理による物性改変に道―

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 カーボンナノチューブ(CNT)は、その優れた物性により未来の機能材料として期待されている炭素の円筒状ナノ材料です。その物性は円筒の直径や炭素の並び方(CNTの構造)に強く依存するため、長年、特定の構造をねらった合成や、混合物から分離するための研究が盛んに行われてきました。しかしながら、直径1ナノメートル程度以下の細いCNTでは構造制御の様々な方法が提案されている一方で、より太いCNTでは、同程度の直径で炭素の並ぶ向きの異なるCNTの種類が非常に多くなり、構造選択的合成や構造分離が困難でした。

 宮内雄平 エネルギー理工学研究所教授、田中丈士 産業技術総合研究所研究グループ長、原野幸治 物質・材料研究機構主幹研究員らの研究グループは、あらかじめ構造を揃えた細いCNTの集合体に熱処理を行うという非常にシンプルな方法で、元のCNTの炭素の並ぶ方向を保ったままCNT同士を融合し、直径2倍のCNTへと効率よく変換できることを発見しました。本成果は、これまで困難だった太いCNTの構造選択合成や、CNT集合体の特性を後処理により大幅に改変することを可能にするものです。

 本研究成果は、2025年2月5日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

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カーボンナノチューブ融合のイメージ図
研究者のコメント
「今回の成果は、CNTを高温で利用するためにCNT集積体の熱安定性を調べる研究の中で得られたものです。当初、精密なCNT融合をマクロスケールで引き起こせるとは考えてもいませんでしたが、熱処理後の光学スペクトルに出現した融合のわずかな兆候を見逃さなかったことが、今回の成果に繋がりました。計画通りの成果も嬉しいですが、こうした予想外の発見に時折巡り会えることも、研究の醍醐味だと実感しています。」(宮内雄平)
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-025-56389-6

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/291674

【書誌情報】
Akira Takakura, Taishi Nishihara, Koji Harano, Ovidiu Cretu, Takeshi Tanaka, Hiromichi Kataura, Yuhei Miyauchi (2025). Coalescence of carbon nanotubes while preserving the chiral angles. Nature Communications, 16, 1093.