内田由紀子 人と社会の未来研究院教授は、米国スタンフォード大学(Stanford University)との共同研究により、コロナ禍での人の行動、認知、感情を通じて、文化が危機対応に与える役割を明らかにしました。米国と日本、台湾、韓国の文化的特徴が対応の違いに影響した過程を解明し、将来の危機に新たな視点を提供するものです。COVID-19は世界中で未曾有の課題を突きつけましたが、その対応による成否は違いがありました。本研究は、「文化的デフォルト」と呼ばれる、無意識的に採用される思考が、この違いに関与していることを論じました。過去数十年にわたる心理学研究を精査し、COVID-19の初期対応におけるリーダーのスピーチや報道内容を分析しました。米国では楽観主義や個人の判断がデフォルトとされる一方、日本では現実主義や社会の要請にあわせた行動が重視されていました。これらの違いが、感染拡大抑制の成功度合いに影響したと考えられます。自文化のデフォルトを認識して他国の状況から学ぶことが、グローバルなリスク解決に役立つ可能性があります。多様な人が協力して新しい危機に立ち向かう際に互いに調整していくことも重要です。
本研究成果は、2024年12月19日に、国際学術誌「Psychological Science in the Public Interest」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1177/15291006241277810
【書誌情報】
Hazel Rose Markus, Jeanne L. Tsai, Yukiko Uchida, Angela M. Yang, Amrita Maitreyi (2024). Cultural Defaults in the Time of COVID: Lessons for the Future. Psychological Science in the Public Interest, 25, 2, 41-91.