バセドウ病の新たな治療法開発を目指して―独自モデルマウスによる甲状腺機能亢進症研究―

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 山内一郎 医学研究科助教、岸本曜 同准教授、稲垣暢也 同教授(現:田附興風会理事長)らの研究グループは、バセドウ病をはじめとする甲状腺機能亢進症の病態解明に向けた重要な成果を報告しました。

 バセドウ病は数十年にわたり新たな治療法が開発されていませんが、本研究グループは甲状腺機能亢進症の発症メカニズムの解明を通じて、新規治療薬の開発を目指しています。本研究では、体内で甲状腺刺激ホルモン(TSH)を過剰に産生させる手法を用いて、独自の甲状腺機能亢進症モデルマウスを作製しました。このマウスの甲状腺を詳細に解析した結果、甲状腺機能亢進症において生じる様々な変化を捉えることに成功し、さらには未知の分子がその発症に関与している可能性を見出しました。

 本研究は、治療薬開発に向けた新たなアプローチを提供するとともに、作製したモデルマウスを用いる治療効果の検証も可能にしました。これらの成果により、甲状腺機能亢進症の新たな治療法開発の推進が期待されます。

 本研究成果は、2024年12月10日に、国際学術誌「iScience」にオンライン掲載されました。

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本研究の概要:ハイドロダイナミック法によるTSH過剰産生という手法を用いて、新たな甲状腺機能亢進症モデルマウスを作製。その甲状腺を詳細に解析し、病態解明を行った。
研究者のコメント
「バセドウ病を含めた甲状腺疾患の診療に携わっていますが、現在の治療法ではうまくいかない局面に多々直面します。これは私に限ったことではなく、他の先生からも研究を進めてほしいとお声を頂いていました。モデルマウスの樹立には多くの苦労もありましたが、この論文の成果を足掛かりとして、新規治療の開発へ歩を進めていきたいと思います。」(山内一郎)
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.111565

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/290943

【書誌情報】
Ichiro Yamauchi, Taku Sugawa, Takuro Hakata, Akira Yoshizawa, Tomoko Kita, Yo Kishimoto, Sadahito Kimura, Aya Sakurai, Daisuke Kosugi, Haruka Fujita, Kentaro Okamoto, Yohei Ueda, Toshihito Fujii, Daisuke Taura, Yoriko Sakane, Akihiro Yasoda, Nobuya Inagaki (2025). Transcriptomic landscape of hyperthyroidism in mice overexpressing thyroid-Stimulating hormone. iScience, 28, 1, 111565.