海や湖にそそぐ自然のつながりの保たれた川には、海や湖からさまざまな回遊魚が産卵などの為に遡上してきます。これら多様な回遊魚の存在は川の生態系にどのように影響しているのでしょうか。
倉澤央 生態学研究センター修士課程学生(研究当時)、大西雄二 総合地球環境学研究所特任助教、宇野裕美 東北大学准教授らのグループは、琵琶湖にそそぐ川を対象に、綿密な野外調査による魚の遡上実態の解明と魚に由来する栄養塩の化学・安定同位体比分析を行いました。その結果、琵琶湖から遡上する多様な回遊魚が排泄する「おしっこ」が、一次生産者の生育に不可欠なリンや窒素などの栄養塩を河川生態系に供給することで河川の生物群集を支えていること、多様な魚種が季節をおって順に遡上することで年間8か月もの間その効果が持続することを明らかにしました。この成果は自然の生態系のつながりおよび大移動する動物の存在とその多様性が生態系全体に果たす役割の重要性について新たな側面を明らかにしたものであり、自然環境の管理と保全に重要な示唆を与えます。
本研究成果は、2024年10月25日に、国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1126/sciadv.adq0945
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/290627
【書誌情報】
Akira Kurasawa, Yuji Onishi, Keisuke Koba, Keitaro Fukushima, Hiromi Uno (2024). Sequential migrations of diverse fish community provide seasonally prolonged and stable nutrient inputs to a river. Science Advances, 10, 43, eadq0945.