小惑星リュウグウに存在するマグネシウム炭酸塩の形成史と始原的なブライン(brine)の化学進化を解明

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 野口高明 理学研究科教授、吉村寿紘 海洋研究開発機構副主任研究員、高野淑識 同上席研究員、荒岡大輔 産業技術総合研究所主任研究員、奈良岡浩 九州大学教授らの国際共同研究グループは、東京大学、株式会社堀場テクノサービス、北海道大学、東京工業大学、名古屋大学の研究者らとともに、小惑星リュウグウのサンプルに含まれるブロイネル石(Breunnerite)などのマグネシウム鉱物や始原的なブライン(brine:塩化ナトリウムや塩化マグネシウムなどの塩分を含んだ水)の精密な化学分析を行うことで、その組成や含有量などを明らかにしました。

 小惑星リュウグウは、地球が誕生する以前の太陽系全体の化学組成を保持する、最も始原的な天体の一つです。これまでさまざまな研究グループの分析により、鉱物・有機物と水が関わる水質変成が明らかになってきましたが、いわゆる「ブラインの化学組成とイオン性成分の沈殿」に関する反応履歴は、未だ不明のままでした。

 そこで本研究では、小惑星リュウグウのサンプルから微小な炭酸塩鉱物(ブロイネル石)の単離・同定と陽イオン成分の溶媒抽出を行い、精密な化学組成分析を行いました。その結果、リュウグウに含まれる鉱物と最後に接触した水の陽イオン組成は、ナトリウムイオン(Na+)に富んでいることがわかりました。リュウグウにはマグネシウムに非常に富む鉱物が複数存在していますが、本研究では、これらが水からマグネシウムを除去した際の沈殿順序を解明しました。ナトリウムイオンは、鉱物や有機物の表面電荷を安定化させる電解質として働いたと考えられます。

 本成果は、初期の太陽系の化学進化を紐解くものであるとともに、始原的なブラインの物質情報、炭素質小惑星上での水-鉱物相互作用の一次情報を提供する重要な知見となります。

 本研究成果は、2024年9月5日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。

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小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星リュウグウに含まれるブロイネル石(Breunnerite、右下の顕微鏡写真)を地球に帰還させるイメージ図(©海洋研究開発機構)
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-024-50814-y

【書誌情報】
Toshihiro Yoshimura, Daisuke Araoka, Hiroshi Naraoka, Saburo Sakai, Nanako O. Ogawa, Hisayoshi Yurimoto, Mayu Morita, Morihiko Onose, Tetsuya Yokoyama, Martin Bizzarro, Satoru Tanaka, Naohiko Ohkouchi, Toshiki Koga, Jason P. Dworkin, Tomoki Nakamura, Takaaki Noguchi, Ryuji Okazaki, Hikaru Yabuta, Kanako Sakamoto, Toru Yada, Masahiro Nishimura, Aiko Nakato, Akiko Miyazaki, Kasumi Yogata, Masanao Abe, Tatsuaki Okada, Tomohiro Usui, Makoto Yoshikawa, Takanao Saiki, Satoshi Tanaka, Fuyuto Terui, Satoru Nakazawa, Sei-ichiro Watanabe, Yuichi Tsuda, Shogo Tachibana, Yoshinori Takano (2024). Breunnerite grain and magnesium isotope chemistry reveal cation partitioning during aqueous alteration of asteroid Ryugu. Nature Communications, 15, 6809.

メディア掲載情報

京都新聞(9月6日夕刊 7面)に掲載されました。