人々は、日常の様々な場面で多くの健康情報と接しています。多様な健康情報を適切に理解し、評価したうえで、意思決定に活用することが望まれますが、そのためには健康情報の読み解き方、Evidence-based medicine(EBM)の基本的な知識やスキルの習得が有用と考えられます。(EBMとは、「限られた資源の中で、最善の科学的根拠を、患者/自身の病態や置かれている状況、価値観や行動と統合して意思決定すること」とされます。)EBMは、主に医療提供者の養成課程等において教育されていますが、日本では非医療者の市民がEBMを学習する機会はほとんどなく、EBMを学習したときの効果もほとんど評価されていません。
そこで、岡林里枝 環境安全保健機構助教、高橋由光 医学研究科准教授、石見拓 同教授、中山健夫 同教授らの研究グループは、EBMの中で特に日常生活での意思決定に有用と思われるテーマで構成した、市民向けのEラーニング教材「健康情報なっとくん」を開発し、同教材の学習効果をランダム化比較試験で検証しました。その結果、市民(非医療者)が同教材で学ぶことの有効性が示唆されました。
本研究成果は、2024年7月20日に、国際学術誌「Health Education Research」にオンライン掲載されました。
「本研究で評価した教材は、Eラーニングであるため場所や時間を問わず、気軽に短時間で学ぶことができます。ぜひ多くの市民の方々にご利用いただき、健康・医療情報を上手に活用し、『納得(なっとく)』のいく意思決定の一助になることを願っています。今後は、より多くの方々を対象とした本教材の有効性の評価や、教材の追加・改訂を行っていく予定です。」
【DOI】
https://doi.org/10.1093/her/cyae024
【書誌情報】
Satoe Okabayashi, Kyoko Kitazawa, Hisashi Noma, Yoshimitsu Takahashi, Taku Iwami, Takashi Kawamura, Takeo Nakayama (2024). Effectiveness of e-learning material on essential components of evidence-based medicine among laypersons: a randomized controlled trial. Health Education Research.