井上浩輔 白眉センター/医学研究科准教授、石見拓 医学研究科教授、森雄一郎 同博士課程学生と八木隆一郎 米国ハーバード大学(Harvard University)リサーチフェロー、後藤信一 同講師の研究グループは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の生活習慣病予防健診および医療レセプトのデータ(約300万人)を用いて、健康診断において心電図異常が指摘されると、将来の心血管疾患(CVD)の発症リスクが上昇することを明らかにしました。
これまでの研究で、心電図所見が心血管疾患の発症と関連があることは指摘されてきた一方で、一般集団での心電図スクリーニングの役割に関して包括的な評価がされていませんでした。本研究では、全国健康保険協会(協会けんぽ)加入者を対象とし、心電図所見と将来のCVD発症のリスクの関連を評価しました。その結果、軽度心電図異常や重度心電図異常が指摘された加入者は、正常所見だった加入者と比較して、将来の心血管疾患発症のリスクの上昇が見られました。さらに、軽度心電図異常の種類だけではなく数が多い場合、CVD発症リスクや重度心電図異常発症リスクがより高くなることが示されました。
本研究結果は、日本において一般的である健康診断における心電図検査が心血管疾患のリスク評価に有用である可能性を示しています。心血管疾患の負担が世界的に増大している中、簡易・安価な心電図を用いた集団的なアプローチが再評価される可能性があります。このような一般集団における大規模な心血管スクリーニングに着目した研究は世界的にみても限られているため、より詳細な評価が望まれます。さらに、CVDスクリーニングの更なる精度向上のためには人工知能(AI)の活用が今後期待されています。
本研究成果は、2024年7月2日に、国際学術誌「JAMA Internal Medicine」に掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2024.2270
【書誌情報】
Ryuichiro Yagi, Yuichiro Mori, Shinichi Goto, Taku Iwami, Kosuke Inoue (2024). Routine Electrocardiogram Screening and Cardiovascular Disease Events in Adults. JAMA Internal Medicine.
日本経済新聞(7月9日 16面)、京都新聞(7月10日 21面)、朝日新聞(8月21日 20面)、読売新聞(8月24日 18面)に掲載されました。