大地震発生直前に観察される電離層異常発生の物理メカニズムを発見―地殻破壊時に粘土質内の水が超臨界状態となることが鍵―

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 梅野健 情報学研究科教授、水野彰 同研究員、高明慧 同専門業務職員(研究当時)らの研究グループは、大地震発生直前に観察される電磁気学的異常を地殻破壊時の粘土質内の水が超臨界状態であることにより説明する物理メカニズムを発見しました。今まで、2011年東北沖地震、2016年熊本地震などの大地震発生直前に震源付近の電離層上空に異常が観測されたことが報告されていましたが、なぜ大地震発生直前の電離層に異常が生じるかを明確に説明する物理モデルの報告はなく、幾つかの仮説が提唱されているのみでした。

 本研究グループは、プレート境界面には、すべりやすいスメクタイトなどの粘土質が存在し、その粘土質の中にある水が地震発生前の高温高圧下で超臨界状態となり、電気的な性質が通常の水と異なり絶縁性となり、電気的特性が急に変化することで電磁気学的異常が生成することを初めて提案し、電離層への影響を大気の静電容量によりモデル化し、モデルから予測される生成電場の大きさと観測されている地震発生前の電離層の伝搬異常の速度変化が整合的であることを示しました。今後、この研究の実証を更に進めることで、宇宙(電離層)における異常と地震発生直前との物理が結合する新しい科学の誕生が期待され、さらにはこの科学的知見を活かす事前防災システムの実現とその環太平洋地域など地震が多発する地域での普及への貢献が考えられます。

 本研究成果は、2024年3月19日に、国際学術誌「International Journal of Plasma Environmental Science and Technology」にオンライン掲載されました。

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石川県穴水町 2024年3月7日(撮影:梅野健)
研究者のコメント

「本研究の原点となったのは、自分自身が2011年3月11日に福島で東北沖地震を経験し、その福島で考えた物理の原則、『無から有は生じない』ということです。地震という大きな運動エネルギーに変換する前は、別の形でエネルギーが蓄積されていたはずで、そのエネルギーの変化自身も物理的なプロセスなのでそれは観測で捉えられるはずであるという信念でした。今回は研究グループに参画した水野研究員のもたらした、水の超臨界状態という第三の状態というアイデアおよびその超臨界状態の再現実験での検証と、ほぼ同時期(2021年)に私自身が構築した電離層異常と電場との精密な線形応答理論という理論が結びつき、更に我々自身がその前に観測していた数々の大地震発生前の電離層の異常が偶然のノイズによるものではなく、本当の異常であることが私の中では確信に変わりました。大地震で被災された方のためにも、また今後の大地震に備えるためにも、この電離層と地震を結びつける精密科学の構築、そして、これらの科学的な知見に基づく防災システムを早期に実現していきたいと考えております。」(梅野健)

研究者情報
研究者名
水野 彰
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.34343/ijpest.2024.18.e01003

【書誌情報】
Mizuno Akira, Kao Minghui, Umeno Ken (2024). A capacitive coupling model between the ionosphere and a fault layer in the crust with supercritical water. International Journal of Plasma Environmental Science and Technology, 18, 1, e01003.

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