ガラスのように透明で曲げられるエアロゲル―高性能透明断熱材として期待―

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 上岡良太 理学研究科博士課程学生(研究当時)、原瑶佑 同博士課程学生(研究当時)、金森主祥 同助教らの研究グループは、ガラスのように透明かつ曲げ変形が可能な低密度多孔体(エアロゲル)の作製に成功しました。エアロゲルは熱伝導率の極めて低い多孔体であり、省エネルギー材料として期待されていますが、機械的な強度やハンドリング性の向上に課題がありました。本研究グループは、エアロゲルを作る材料として一般的に用いられているシリカではなく、より柔軟なシリコーンを利用することによってエアロゲルに柔軟性を付与し、強度を高めることに成功しました。特に、非イオン性の界面活性剤と、重縮合触媒として有機強塩基を用いたことによって、高強度の繊維状骨格構造が形成し、高透明かつ曲げ柔軟性の高いエアロゲルを得ることができました。この技術を利用してエアロゲルの工業生産やハンドリングが容易になれば、高性能透明断熱材として広く利用可能になることが期待されます。

 本研究成果は、2024年1月11日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

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本研究で得られた新しいシリコーンエアロゲル
研究者のコメント

「エアロゲルは90年も前に発見されたものですが、その機械的物性には未だに多くの課題や謎が残されています。これまでエアロゲルを構成する材料を変化させた研究は数多くされてきましたが、構造や密度なども同時に変化してしまっており、機械的物性の由来はよく分かっていませんでした。そこで、細孔が小さくてもその形状を変えるだけで機械的物性には変化が見られるはずだ、と考え、研究を進めたところ、今回の成果に繋げることができました。本研究により、エアロゲルの物性改善に向けた研究を大きく前進させることができただけでなく、多孔体の細孔構造と機械的特性の関係性について重要な知見が得られたと考えております。」(上岡良太)

研究者情報
研究者名
原 瑶佑
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-024-44713-5

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286745

【書誌情報】
Ryota Ueoka, Yosuke Hara, Ayaka Maeno, Hironori Kaji, Kazuki Nakanishi, Kazuyoshi Kanamori (2024). Unusual flexibility of transparent poly(methylsilsesquioxane) aerogels by surfactant-induced mesoscopic fiber-like assembly. Nature Communications, 15:461.