浅場智也 理学研究科特定准教授、清末俊紀 同修士課程学生(研究当時)、末次祥大 同助教、笠原裕一 同准教授、幸坂祐生 同教授、松田祐司 同教授、田財里奈 名古屋大学特任助教(現:基礎物理学研究所助教)、大西朝登 東京大学博士課程学生、影山遥一 同博士課程学生、橋本顕一郎 同准教授、芝内孝禎 同教授、紺谷浩 名古屋大学教授らの研究グループは、中国・南京大学および米国・カリフォルニア大学サンタバーバラ校と共同で、カゴメ(籠目)状の格子をもつ金属においてループ電流状態が実現している熱力学的証拠を発見しました。ループ電流状態は、物質中に自発的に原子スケールで渦状の電流が流れる特異な状態ですが、その熱力学的な証拠はこれまで見つかっていませんでした。
本研究成果は、2024年1月4日に、国際学術誌「Nature Physics」に掲載されました。
「本研究で測定したCsV3Sb5は世界的に注目されている物質で、さまざまな実験や理論提案がなされています。今回発見されたループ電流は、理論的には存在が予測されていたものの見つかっていなかった新しい状態で、従来の磁石とは異なり原子スケールの電流が極小の磁石を形成する、奇妙な状態です。こういった新現象の発見に立ち会う瞬間は、研究をしていてもっとも興奮する時間の一つといえるでしょう。」
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41567-023-02272-4
【書誌情報】
T. Asaba, A. Onishi, Y. Kageyama, T. Kiyosue, K. Ohtsuka, S. Suetsugu, Y. Kohsaka, T. Gaggl, Y. Kasahara, H. Murayama, K. Hashimoto, R. Tazai, H. Kontani, B. R. Ortiz, S. D. Wilson, Q. Li, H. -H. Wen, T. Shibauchi, Y. Matsuda (2024). Evidence for an odd-parity nematic phase above the charge-density-wave transition in a kagome metal. Nature Physics.