アルツハイマー病は、脳の神経細胞が徐々に変性する進行性の疾患です。主に高齢者に見られ、記憶力の低下や認知機能の障害が特徴です。原因は完全には解明されていませんが、アルツハイマー病患者の脳では、神経細胞の変性に先立ってアミロイドβと呼ばれるタンパク質の蓄積が生じることが知られています。脳内のアミロイドβの蓄積を判定する方法は、現状では高額なコストや侵襲性などの問題を抱えています。そのため、脳内のアミロイドβの蓄積量を予測できる、簡便で非侵襲に計測可能なバイオマーカー(血液、尿、医療画像などから測定可能な、病気の状態を表す指標)があれば、アルツハイマー病の早期発症予測に有用なはずです。
通常、機械学習を用いてアミロイドβの蓄積量をバイオマーカーから予測しようとすると、ペアデータ(バイオマーカーとアミロイドβ蓄積量を同じサンプルで観測したデータ)が必要になります。しかし、このようなペアデータの取得は高コストで労力もかかるため、バイオマーカー探索では避けられてきました。そこで、本田直樹 生命科学研究科特命教授(兼任:広島大学教授、生命創成探究センター客員教授)、矢田祐一郎 広島大学特任助教からなる研究グループは、ペアデータが限られている場合でも、アミロイドβ蓄積量の定量的予測を可能にする機械学習モデルを開発しました。今後、この技術を応用することで、アミロイドβ蓄積量の予測性に基づいた新たなアルツハイマー病バイオマーカーが開発されることが期待されます。
本研究成果は、2023年11月23日に、国際学術誌「npj Systems Biology and Applications」に掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41540-023-00321-5
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286505
【書誌情報】
Yuichiro Yada, Honda Naoki (2023). Few-shot prediction of amyloid β accumulation from mainly unpaired data on biomarker candidates. npj Systems Biology and Applications, 9:59.