サルコイドーシスやクローン病といった肉芽腫性疾患では、肉芽腫という免疫細胞の塊が形成され、失明、不整脈、肺線維症、下痢などの症状を引き起こします。しかしながら、肉芽腫性疾患の原因は不明であり、有効な治療法も限られています。
椛島健治 医学研究科教授、中溝聡 同特定講師らの研究グループは、肉芽腫性疾患の代表であるサルコイドーシスを解析することにより、肉芽腫性疾患の原因を明らかにしたいと考えました。そのために、サルコイドーシスの患者の皮膚病変を1細胞RNAシークエンスという手法で解析しました。その結果、ペントースリン酸回路という代謝経路が亢進しているマクロファージが肉芽腫を作っていることを明らかにしました。さらに、ペントースリン酸回路を阻害することにより肉芽腫形成が試験管内でも、マウスの肉芽腫モデルでも阻害され、治療効果があることが証明されました。現在、様々な製薬会社と連絡を取り、この研究結果をもとにした新たな薬剤の開発をお願いしています。
本研究成果は、2023年12月1日に、国際学術誌「Journal of Clinical Investigation」にオンライン掲載されました。
「今までサルコイドーシス肉芽腫の構成細胞は未知でありました、ましてや代謝経路については何もわかっていませんでした。本研究結果は肉芽腫構成細胞の代謝という未知の領域を明らかにしただけではなく、代謝に関わる酵素が診断、治療に繋がる可能性を示しました。また、動物実験ではなく実際の患者検体から見出した知見であるため、臨床に繋がる可能性が高いと考えております。」(中溝聡)
【DOI】
https://doi.org/10.1172/JCI171088
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286280
【書誌情報】
Satoshi Nakamizo, Yuki Sugiura, Yoshihiro Ishida, Yoko Ueki, Satoru Yonekura, Hideaki Tanizaki, Hiroshi Date, Akihiko Yoshizawa, Teruasa Murata, Kenji Minatoya, Mikako Katagiri, Seitaro Nomura, Issei Komuro, Seishi Ogawa, Saeko Nakajima, Naotomo Kambe, Gyohei Egawa, Kenji Kabashima (2023). Activation of the pentose phosphate pathway in macrophages is crucial for granuloma formation in sarcoidosis. Journal of Clinical Investigation, 133(23):e171088.
京都新聞(12月7日 21面)に掲載されました。