浅場智也 理学研究科特定准教授、Peng Lang 同ポスドク研究員(現:華為科技有限会社)、小野孝浩 同修士課程学生(研究当時)、末次祥大 同助教、笠原裕一 同准教授、寺嶋孝仁 同教授、幸坂祐生 同教授、市川正敏 同講師、佐々真一 同教授、松田祐司 同教授、芝内孝禎 東京大学教授らの研究グループは、ドイツ・フランクフルト大学と共同で、グラファイト基板上に塩化ルテニウム(半導体)のナノ量子細線を作製する手法を発見しました。この量子細線は、厚みと幅が約1ナノメートル(原子数個分)と極めて細いにもかかわらず、長さが1マイクロメートルを大きく超えます。また、ほぼ直線で等間隔に並び、細線の幅や間隔を変えることも可能です。このような量子細線のパターンは、これまでにはない新しい機構に基づくもので、熱帯魚の縞模様やキリンのまだら模様が生じるのと同じ原理で自発的に形成されている可能性が高いことも研究グループは明らかにしました。
本研究成果は、ナノテクノロジーにおける超微細加工に新たな視点を提供するものであり、1ナノメートルサイズの半導体や金属の量子細線の作製を可能にすることが期待されます。
本研究成果は、2023年5月4日に、国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。
「研究にはセレンディピティが大事であると、しばしば耳にします。セレンディピティとは、探しているものとは別の価値あるものを偶然に見つけることです。本成果はセレンディピティの塊といえるでしょう。当初、キタエフ量子液体中のマヨラナ粒子という呪文のような現象を探究していた研究グループは、研究の途中、原子スケールで整列した不可思議なパターンを目にしました。当初の計画から派生したこのプロジェクトは、非平衡現象やバンド計算の専門家との共同研究という形で花開き、領域横断的な研究成果として結実しました。こういったことが起きるのも、研究の醍醐味といえるでしょう。」(浅場智也)
【DOI】
https://doi.org/10.1126/sciadv.abq5561
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/282022
【書誌情報】
Tomoya Asaba, Lang Peng, Takahiro Ono, Satoru Akutagawa, Ibuki Tanaka, Hinako Murayama, Shota Suetsugu, Aleksandar Razpopov, Yuichi Kasahara, Takahito Terashima, Yuhki Kohsaka, Takasada Shibauchi, Masatoshi Ichikawa, Roser Valentí, Shin-ichi Sasa, Yuji Matsuda (2023). Growth of self-integrated atomic quantum wires and junctions of a Mott semiconductor. Science Advances, 9(18):eabq5561.
朝日新聞(5月23日 22面)に掲載されました。