結核などの慢性感染病態では、病原体と宿主免疫系の攻防の結果、マクロファージが同心円状に密に配置された球状の細胞集塊(肉芽腫)が形成されます。肉芽腫の内部には、炎症を抑える細胞が形成する特殊な環境が存在し、そのせいで異物や病原菌が長期間にわたって生存してしまいます。肉芽腫において炎症を抑える細胞が、どのようにして誘導されるのか、そのメカニズムは不明でした。
水谷龍明 医生物学研究所助教、杉田昌彦 同教授の研究チームは、モルモット肉芽腫モデルを活用して、炎症抑制性M2マクロファージの肉芽腫分布を特定するとともに、S100A9分子を高発現する活性化好中球がM2マクロファージと隣接して存在することを発見しました。また、S100A9ノックアウトマウスを用いた分子細胞生物学実験を通して、好中球S100A9を介したM2マクロファージ誘導機序の解明に成功しました。今回の研究成果は、結核の病態形成の解明につながるだけでなく、がん性炎症の理解と制御に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2023年1月29日に、学術誌「iScience」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.isci.2023.106081
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/279355
【書誌情報】
Tatsuaki Mizutani, Toshiaki Ano, Yuya Yoshioka, Satoshi Mizuta, Keiko Takemoto, Yuki Ouchi, Daisuke Morita, Satsuki Kitano, Hitoshi Miyachi, Tatsuaki Tsuruyama, Nagatoshi Fujiwara, Masahiko Sugita (2023). Neutrophil S100A9 supports M2 macrophage niche formation in granulomas. iScience, 26(3):106081.