「万引き」依存症のメカニズムを解明―窃盗症が不適応な学習である証拠の発見―

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 窃盗症(クレプトマニア・Kleptomania)は、物を盗みたいという衝動や欲求を制御できず、繰り返し窃盗をしてやめることのできない精神障害です。万引きなどの犯罪で逮捕される人のなかには、窃盗症による場合が少なくありません。犯罪と直結する深刻な社会問題ともなる精神障害ですが、窃盗症の科学的な研究はほとんど行われておらず、そのメカニズムはわかっていません。

 後藤幸織 情報学研究科准教授、浅岡由衣 理学研究科博士課程学生、元武俊 MRCラボクリニック医師らの研究グループは、スーパーマーケットなどの物品を盗む状況と関連する画像やビデオなど、窃盗症を引き起こすと考えられる視覚的な手がかり刺激に対して、健常者には見られないような視線の動きと脳活動の反応が窃盗症患者に見られることを明らかにしました。これらの結果から、窃盗症患者は、不適応な学習によって、窃盗行為に関連する視覚的な手がかり刺激を健常者と異なった認識しており、物質使用障害(薬物依存症)などの依存症と同様のメカニズムが関わっている可能性が示されました。

 本研究成果は、2023年2月2日に、国際学術誌「International Journal of Neuropsychopharmacology」にオンライン掲載されました。

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図の説明:窃盗症では、物を盗む行為に関連した環境(手がかり)を不適応学習してしまうため、そのような刺激によって、繰り返し、窃盗する行為の衝動や欲求が引き起こされると考えられます。
研究者のコメント

「窃盗症や性嗜好障害による犯罪行為は、多くの場合精神障害であると認知されず、治療の対象とはなっていません。行動依存症の神経心理学的特性を明らかにし、適切な治療へとつなげることで、犯罪の抑止と減少に貢献できると思われます。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1093/ijnp/pyad005

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/283094

【書誌情報】
Yui Asaoka, Moojun Won, Tomonari Morita, Emi Ishikawa, Yukiori Goto (2023). Distinct Situational Cue Processing in Individuals with Kleptomania: A Preliminary Study. International Journal of Neuropsychopharmacology, 26(5), 340–349.

メディア掲載情報

産経新聞(4月6日夕刊 7面)に掲載されました。