高松礼奈 教育学研究科助教、楠見孝 同教授、入戸野宏 大阪大学教授は、子どもの性格についての情報は、子どもに対するかわいい評価、印象、養護欲求に影響することを明らかにしました。
ベビースキーマ効果によると、赤ちゃんや子どもの幼い外見は、大人にかわいいと感情を抱かせ、養護欲求(お世話したい)を高めることで育児行動を促進します。しかし、ベビースキーマ効果が最も強いはずの3歳以下の乳幼児が、被虐待児としてどの文化や社会でも犠牲になっています。なぜ、「かわいい」はずの子どもたちが、養護の対象外となるのか。この謎を解明するために、ベビースキーマ効果モデルでは考慮されていない外見以外の要因、性格に関する情報が関わっているのか、一連の実験を行いました。
その結果、外見以外の特性(性格に関する情報)が、見た目のかわいさ、印象(人懐っこさ、賢さ)、養護欲求(お世話したい)に影響することを実証しました。また、好ましくない性格情報の負の効果は、外見のかわいさに関係なく、1週間後も持続してみられました。
本研究成果は、2023年1月18日に、「PLOS ONE」オンライン版に掲載されました。
研究者のコメント
「この研究は、『かわいさは見た目だけではない』という日常的な直感を実験によって裏づけた研究です。ニュースで児童虐待が報道されるたびに抱いた『なぜ』から着想に至りました。これまでの研究で、虐待リスクの高い養育者は、うつ状態と育児ストレスが高めで、子どもの言動を悪く捉えがちであることがわかっています。今回の研究は、子どもに対してかわいいと感じお世話したい気持ちについて、うつやストレスによって子どもの悪い面に注目してしまうと、持続的に低下してしまう可能性を示しています。逆に、その子どものよい面についての情報が入ってくれば(たとえば他の人と交流することで新しい見方が得られれば)、元の気持ちを回復させることができるかもしれません。育児や生活について悩んでいる養育者を一人にせず、多くの子どもたちが幸せな子ども時代を過ごせる世界の実現につながればと思っています。」
【DOI】
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0279985
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/278788
【書誌情報】
Reina Takamatsu ,Takashi Kusumi, Hiroshi Nittono (2023). Personality descriptions influence perceived cuteness of children and nurturing motivation toward them. PLOS ONE, 15(1): 2161271.