金子周司 薬学研究科教授、永安一樹 同助教、河合洋幸 同博士課程学生(現:大阪公立大学助教)、大村優 北海道大学講師、ユセフブシェキワ 同助教(現:ニューヨーク市立大学研究員)らの研究グループは、正中縫線核に存在するセロトニン神経が、従来知られてきた抗うつ効果を担うセロトニン神経の機能とは反対に不快情動をもたらすセロトニン神経であることを明らかにしました。
快感や不快感といった感情は、生物が生きていく上で必要不可欠なものです。これまでの研究から、不快情動をもたらすセロトニン神経が脳内に存在することが示唆されてきましたが、詳細はわかっていませんでした。
研究グループは、正中縫線核セロトニン神経は不快な刺激によって活動が上昇し、報酬によって活動が低下することを明らかにしました。さらに、光で神経活動を制御できるマウスを使って、脚間核に投射するセロトニン神経が5-HT2A受容体を刺激することが不快情動の生成に重要であることを明らかにしました。今回の結果は、対照的な機能をもつセロトニン神経の制御を通じた抗うつ薬の開発につながると期待されます。
本研究成果は、2022年12月22日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「長年付き合ってきたセロトニン神経の意外な機能を見つけることができました。背側縫線核のセロトニン神経の研究を長くやってきましたが、それだけではセロトニン神経のことを理解できたとは言えないなということを痛感しました。セロトニン神経から追加で課題を出された気分です。早くセロトニン神経のすべてを理解できるようになりたいです。」(永安一樹)
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-022-35346-7
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/278124
【書誌情報】
Hiroyuki Kawai, Youcef Bouchekioua, Naoya Nishitani, Kazuhei Niitani, Shoma Izumi, Hinako Morishita, Chihiro Andoh, Yuma Nagai, Masashi Koda, Masako Hagiwara, Koji Toda, Hisashi Shirakawa, Kazuki Nagayasu, Yu Ohmura, Makoto Kondo, Katsuyuki Kaneda, Mitsuhiro Yoshioka, Shuji Kaneko (2022). Median raphe serotonergic neurons projecting to the interpeduncular nucleus control preference and aversion. Nature Communications, 13:7708.