天然記念物ヒブナの起源を解明―クローン繁殖のはずなのにキンギョと交雑―

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 三品達平 理学研究科博士課程学生(現:理化学研究所)、渡辺勝敏 同准教授、野本和宏 釧路市立博物館学芸員、町田善康 美幌博物館学芸員を中心とした共同研究グループは、北海道の春採湖などに生息する緋色のフナ、「ヒブナ」の起源を解明し、クローン繁殖種が遺伝的多様性を獲得していく実例を提示しました。

 日本人に馴染み深い淡水魚であるフナには、雄と雌で繁殖をする2倍体とクローン繁殖をする3倍体の雌(クローンフナ)が共存しています。北海道では緋色のクローンフナ、「ヒブナ」が知られ、なかでも春採湖は「ヒブナ生息地」として天然記念物に指定されています。研究グループがヒブナの起源を遺伝子分析により調べたところ、ヒブナはクローンフナと約100年前に放流されたキンギョの交雑に由来し、多様なクローンが存在することが明らかになりました。ヒブナは、一般的には他の個体と交配しないクローン繁殖をする生物が、稀な有性生殖を通じて多様化する過程を示した興味深い事例だと言えます。一方で、在来集団の遺伝的固有性を守るためにも、キンギョの放流やヒブナの拡散が起こらないように啓発していく必要があると考えられます。

 本研究成果は、2022年10月21日に、国際学術誌「PLOS ONE」にオンライン掲載されました。

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本研究成果の概要図

研究者のコメント

「全国的なフナの進化研究を行う中で、縁あって、有名なヒブナの遺伝子分析をさせていただくことになりました。最初に結果を見た時は、正直なところ、どうしたものか…と戸惑いました(笑)。フナは極めて特殊な繁殖生態をもつ興味深い生物ですが、ヒブナはそのことを象徴する存在と言えるかもしれません。キンギョは多くの方にとって親しみ深い魚ですが、野外に放流することなく、最後まで愛情をもって飼育してください。」(三品達平)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0276390

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/276850

【書誌情報】
Tappei Mishina, Kazuhiro Nomoto, Yoshiyasu Machida, Tsutomu Hariu, Katsutoshi Watanabe (2022). Origin of scarlet gynogenetic triploid Carassius fish: Implications for conservation of the sexual–gynogenetic complex. PLOS ONE, 17(10):e0276390.

メディア掲載情報

読売新聞(10月22日夕刊 9面)に掲載されました。