横山拓真 理学研究科博士後期課程学生、古市剛史 野生動物研究センター教授らの研究グループは、コンゴ民主共和国ルオー学術保護区の野生ボノボの集団において、性皮最大腫脹を示す妊娠可能性の高いメスは高順位オスと頻繁に近接し、交尾頻度が高いことを明らかにしました。
私たちヒトは繁殖目的だけでなく、社会的なコミュニケーションの方法として性交渉をすることもあります。ヒト以外の霊長類も、さまざまな方法、戦略に従って性交渉をします。ヒトに最も近縁と言われているボノボは、繁殖目的だけでなく社会的コミュニケーションとして性交渉をすることもあり、ボノボの交尾パターンについて研究することは、繁殖目的だけに収まらないヒトの性交渉の不思議の解明につながるかもしれません。
本研究では、ボノボのオトナメスを対象に個体追跡法を用いた観察を行い、メスの性的状態に着目しながらオスとの付き合い方、交尾パターンについて分析しました。
これまでの研究では、ボノボのメスは相手のオスの社会的順位に関わらず乱交的に交尾をしているだろうと言われていました。本研究により、性皮最大腫脹を示すメスは高順位オスと頻繁に近接し、交尾頻度も高いことが明らかになりました。高順位の母親を持つ息子は、母親の存在やサポートによって性的受容性の高いメスと頻繁に近接し交尾の機会を得ることができるという、従来言われていたボノボの交尾パターンの傾向を裏付けることができます。
本研究成果は、2022年8月5日に、国際学術誌「Primates」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「本研究における現地調査は、2018年、2020年の2度に渡って実施しました。2020年の渡航ではCOVID-19の影響で調査の途中中断を余儀なくされ、1カ月以上も日本へ帰国できない辛い経験を味わいました。その際、指導教員である古市教授から「フィールドワーカーは困難を乗り越えてこそ本物になれる」と強い励ましを頂きました。本物のフィールドワーカーを目指し、さまざまな困難を乗り越えて執筆した論文です。」(横山拓真)
【DOI】
https://doi.org/10.1007/s10329-022-01004-1
【書誌事項】
Takumasa Yokoyama, Takeshi Furuichi (2022). Why bonobos show a high reproductive skew towards high-ranking males: analyses for association and mating patterns concerning female sexual states. Primates, 63(5), 483–494.