名越俊平 理学研究科博士課程学生、岩室史英 同准教授の研究チームは、クエーサーの明るさの時間変動が、天体が発する特定の輝線の強さと関係していることを明らかにしました。
クエーサーの明るさはランダムに変動することが観測的に知られておりましたが、その規則性は未解明でした。今回、Sloan Digital Sky Surveyによる約1万天体のスペクトルから、輝線の強度と明るさの変動との関係性を調べました。その結果、ある時点での酸素と鉄の輝線強度が、後の明るさの変化量を決める重要な要素であることを発見しました。さらに、その輝線強度や明るさが、長期的には一定の相関関係を保ちながら変化していることを明らかにしました。
本研究結果は、クエーサーのランダムな変動がスペクトルから予測できる可能性を示しました。また、クエーサーの大規模な変動は、平均的な明るさを中心とした振動現象であることが示唆されました。つまり、スペクトルにはその天体の典型的な明るさの情報が含まれていると考えられるため、本結果はクエーサーの質量獲得の歴史を知る上で重要な考察を与えることが期待されます。
本研究成果は、2022年8月30日に、国際学術誌「Publication of the Astronomical Society of Japan」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「蓄積された時系列データを使った研究は、今後の天文学における大きなトレンドになると思います。特に、クエーサーの時間変動は数年単位のゆっくりとしたものが多く、数十年以上の長時間でどのように変化するのかは未解明です。現在着目されていないデータも多数あり、今後の展開も楽しみです。」(名越俊平)
【DOI】
https://doi.org/10.1093/pasj/psac063
【書誌事項】
Shumpei Nagoshi, Fumihide Iwamuro (2022). The relation between quasars' optical spectra and variability. Publications of the Astronomical Society of Japan, 74(5), 1198–1208.