森信人 防災研究所教授、志村智也 同准教授は、メキシコ自治大学、スペインカンタブリア環境水理学研究所、東京工業大学、Aon、オーストラリアMacquarie大学と共同研究を行い、地球全体の波浪の将来変化予測を行いました。
地球温暖化に伴う海面上昇および沿岸気象変化に加えて、波浪の特性変化により沿岸環境が大きく変わるリスクがあります。そのため、沿岸域の気候変動への適応には、波浪の将来変化を予測することが重要です。これまでの我々の研究で、地球の波浪はいくつかの波浪気候タイプに分類できることを明らかにしましたが、今回の研究では、全球気候モデルにより再現した温暖化した将来の波浪を解析することにより、温暖化によって変化しやすい波浪の種類および地域的ホットスポットを明らかにしました。温暖化に伴い、極域および南大洋の波浪のパワーが増大し、太平洋等の大洋の西部に位置する沿岸では東から波浪が伝搬する波浪の頻度が、東部の沿岸では南から伝搬する波浪気候タイプの頻度が増加することがわかりました。我が国では、高緯度域で西から伝播する波浪気候タイプの頻度増加が予測されました。これは海面上昇に加えて沿岸域における温暖化の影響をさらに強め、沿岸環境を変化させる要因となります。
本研究成果は、地球温暖化に伴う沿岸域の脆弱性の将来変化や適応策、特に砂浜の変化や海洋生態系への研究展開が期待されます。
本研究成果は、2022年6月16日に、国際学術誌「Nature Climate Change」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「本成果は、第1著者のOderizさん(当時メキシコ自治大学の博士後期課程学生)が2019年に京都大学防災研究所に長期滞在されたときに、我々の研究室で作成した波浪予測データセットを用いて行った研究を発展させたものです。地球温暖化に伴う波浪の将来変化を波浪気候タイプおよび地域ごとに詳細に評価でき、日本、メキシコ、オーストラリアの研究者による国際的にも大きな枠組みでの成果になりました。」(志村智也)
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41558-022-01389-3
【書誌事項】
I. Odériz, N. Mori, T. Shimura, A. Webb, R. Silva, T. R. Mortlock (2022). Transitional wave climate regions on continental and polar coasts in a warming world. Nature Climate Change, 12(7), 662–671.
日本経済新聞(7月10日 26面)に掲載されました。