吉田暢広 農学研究科修士課程学生(研究当時)、橋本渉 同教授らの研究グループは、とても安定で反応性に乏しい「大気窒素」を利用する微生物を用いて、バイオディーゼル生産時に副生する「廃グリセロール」から生分解性プラスチック素材を生産しました。
脱炭素社会に実現に向けて、欧州を中心に世界各地で植物油などからバイオディーゼルが製造されています。日本国内においても、京都市などでは廃食用油を回収し、バイオディーゼルを生産しています。一方、生産時に副生する「廃グリセロール」は高pHで不純物を含むため、その利活用が遅れています。本研究では、水で希釈した「廃グリセロール」と「大気窒素」を栄養源とする窒素固定細菌を用いて、有用なバイオポリマー[アルギン酸とポリヒドロキシ酪酸(PHB)]を生産しました。さらに、生分解性プラスチック素材となるPHBの生産について、生育条件と改変株の育種を検討した結果、本窒素固定細菌が大量のPHBを蓄積することが明らかとなりました。
本研究は、化学的窒素固定による環境負荷を低減するとともに、廃棄物を有用素材に変換できる点で、持続可能な開発目標(SDGs)の「目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の達成の一助にも繫がることが期待されます。
本研究成果は、2022年6月7日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-022-11728-1
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/274414
【書誌情報】
Nobuhiro Yoshida, Ryuichi Takase, Yoshimi Sugahara, Yuko Nambu, Wataru Hashimoto (2022). Direct production of polyhydroxybutyrate and alginate from crude glycerol by Azotobacter vinelandii using atmospheric nitrogen. Scientific Reports, 12:8032.
京都新聞(6月8日 25面)に掲載されました。