ジャガイモ疫病は、卵菌類の疫病菌によって引き起こされる深刻な植物病害です。加藤大明 農学研究科特定研究員、寺内良平 同教授、高野義孝 同教授、大門高明 同教授、小内清 同研究員らの研究グループは、ジャガイモ疫病菌のもつスフィンゴ脂質を認識して抵抗性を誘導する植物の受容体を初めて発見しました。
ジャガイモ疫病菌の細胞膜に含まれるセラミドという物質にPi-Cer Dという種類があります。Pi-Cer Dは、植物に抵抗反応を引き起こすことが知られています。実験植物シロイヌナズナとLumi-Map法という最新技術を用いて、Pi-Cer D処理による抵抗反応に必要とされる遺伝子を調べたところ、NCER2セラミダーゼ遺伝子とRDA2受容体の遺伝子が見つかりました。病原菌のPi-Cer DがNCER2セラミダーゼによって切断されると9Me-Sptというスフィンゴ脂質ができ、このスフィンゴ脂質がRDA2受容体に結合すると抵抗反応が引き起こされるしくみがわかりました。今後、9Me-SptとRDA2受容体の結合のしかたとRDA2受容体の働くしくみを詳しく調べることにより、外敵のスフィンゴ脂質に対してより敏感な受容体を開発し、病気に強い作物をつくることも可能です。
本研究成果は、2022年5月20日に、国際学術誌「Science」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1126/science.abn0650
【書誌情報】
H. Kato, K. Nemoto, M. Shimizu, A. Abe, S. Asai, N. Ishihama, S. Matsuoka, T. Daimon, M. Ojika, K. Kawakita, K. Onai, K. Shirasu, M. Yoshida, M. Ishiura, D. Takemoto, Y. Takano, R. Terauchi (2022). Recognition of pathogen-derived sphingolipids in Arabidopsis. Science, 376(6595), 857-860.
読売新聞(6月5日 27面)に掲載されました。