マウス卵子形成不全の遺伝子治療の成功―女性不妊治療への応用に期待―

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 篠原美都 医学研究科助教と篠原隆司 同教授らのグループは、卵子形成促進分子であるサイトカインのKit ligand(Kitl)の卵巣への遺伝子導入により女性不妊症の遺伝子治療に成功しました。

 Kitlは卵子形成を誘導する分子で、卵子を取り囲む体細胞である顆粒膜細胞に発現しています。Kitlを欠損したKitlSl-tマウスは卵子形成不全のため、先天性不妊症になります。原発性卵巣機能不全は40歳の女性の1%程度に見られ、現在治療法はありません。今回、同グループはアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて原発性卵巣機能不全のモデルマウスであるKitlSl-tマウスの遺伝子治療に成功しました。AAVはヒト遺伝子治療に用いられており、血友病、パーキンソン病などの治療の成功報告が相次いでいます。Kitlを発現するAAVを投与された卵巣では卵子形成が開始し、自然交配により子孫が生まれました。子孫にはAAV遺伝子の挿入はありませんでした。本研究から、AAVによる遺伝子治療が女性不妊症の治療につながる可能性が示唆されました。

 本研究成果は、2022年4月28日に、国際学術誌「Cell Reports Medicine」誌にオンライン掲載されました。

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図:卵子の栄養分が受け取れないために不妊症になっている成熟した変異メスマウスの卵巣にアデノ随伴ウイルスを導入したところ、卵胞が発育し、自然交配で子孫を得ることができました。子孫には遺伝子は見当たりませんでした。
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2022.100606

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/270108

【書誌情報】
Mito Kanatsu-Shinohara, Jiyoung Lee, Takehiro Miyazaki, Hiroko Morimoto, Takashi Shinohara (2022). Adeno-associated-virus-mediated gene delivery to ovaries restores fertility in congenital infertile mice. Cell Reports Medicine, 3(5):100606.

メディア掲載情報

産経新聞(4月28日28面)、京都新聞(4月28日21面)、毎日新聞(5月3日16面)、日本経済新聞(5月4日22面)および読売新聞(5月13日13面)に掲載されました。