グリット(Grit:やり抜く力)の2つの側面が大学受験模試に及ぼす影響 -3年間にわたる5波縦断研究からの知見-

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※ 図を一部修正しました(2022年3月4日)

 グリット(Grit:やり抜く力)とは、長期的な目標に向かう際の忍耐力や情熱と定義される性格特性で、「(関心の)一貫性」と「根気(の力)」の2つの側面があります。多くの教育効果研究で、グリットの高い人は、GPA(成績評価値)やテスト得点などの学業成績が高いことが報告されています。これを受けて、日本の教育や保育の現場では、グリットを児童・生徒の将来の学歴、年収や職歴に影響する(IQ以外の力の)「非認知能力」の代表格として位置づけられています。しかしグリットの2側面にどのような効果があるのか、という点については、ほとんど触れられていません。

 この問題を解決するために、西川一二 教育学研究科研究員、楠見孝 同教授、ベネッセコーポレーション 白川隆朋 氏の研究グループは、グリットの2側面が大学受験模試の3年間の得点推移に及ぼす影響を確認しました。調査は公立のトップ進学校の6校の高校生1,403人を対象に実施され、潜在曲線モデルで解析しました。その結果、「根気」の高い生徒ほど、基本的な得点水準が高く、3年間の長期的な得点も少し向上していることがわかりました。「一貫性」は、得点水準やその変化と関連しませんでした。

 本研究成果は、2022年2月19日に、国際学術誌「Personality and Individual Differences」にオンライン掲載されました。

グリットの「根気(の力)」度合いと関連する全国模擬試験の5波にわたる成長の軌跡
図:グリットの「根気(の力)」度合いと関連する全国模擬試験の5波にわたる成長の軌跡
研究者情報
研究者名
西川一二
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1016/j.paid.2022.111557

Kazuji Nishikawa, Takashi Kusumi, Takatomo Shirakawa (2022). The effect of two aspects of grit on developmental change in high school students' academic performance: Findings from a five-wave longitudinal study over the course of three years. Personality and Individual Differences, 191:111557.